ベンツ、BMW、アウディに吹き始めた逆風の正体 米中貿易戦争、罰金、先進化対応など課題山積

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さらに4月5日に入ったニュースによれば、排ガス浄化システムの新技術導入をめぐってダイムラー、BMWグループ、VWグループ(アウディを含む)が談合していたとして、欧州委員会が大規模な罰金を課す可能性が高い情勢となっている。すでに声明を出したBMWグループのケースでは、罰金額は最大で10億ユーロ(約1250億円)を超え、昨年度7.2%だった利益率を1.0~1.5%ポイント程度下げるインパクトがあるそうだ。

こうした市場からの逆風に加えて、電動化技術や自動運転技術に対する投資が膨大になっている点を各メーカーがそろって口にしている。

構造改革とコスト削減で事態改善なるか

メルセデス・ベンツを持つダイムラーとBMWは自動運転技術の共同開発に関して提携を結び、モビリティ・サービスに関する合弁会社を設立することを明らかにしたが、ロイター通信が掲載した経済コラムのように、VWグループやテスラなど新興メーカーとの将来的な競争を考えれば、技術提携にとどまらず両社は経営統合まで真剣に考えるべきだという論も存在する。

自動車産業の平均からすれば依然高い利益率を確保しつつも、先行きに明るさが見えない中で、各社は構造改革とコスト削減で事態を改善しようとしている。

ダイムラーは2012年にわたりトップを務めてきたディーター・ツェッチェ氏が今年5月でついに退任し、開発担当取締役のオラ・ケレニウス氏にバトンを渡す。同時に、乗用車部門、商用車部門、モビリティ・サービスおよび金融部門を分社化し、ダイムラーが持ち株会社となる組織変更が実施される予定だ。

逆にBMWグループでは4月から、これまでBMWとミニ+ロールス・ロイスで別々に展開していた販売・マーケティング組織を統合した。20年前にイギリスのブランドをBMWが入手したときからの流れで、ミニとロールス・ロイスは本社だけでなく現地法人レベルでもBMWとはまったく別の販売・マーケティング・製品企画組織を構築していた。

しかし、そもそも同じ自動車ビジネスを展開するにあたって似たような組織を2つ持つのは非効率だし、BMWがミニと同じ前輪駆動プラットフォームに比重を置き始め、内部的な競合が問題となる中で、組織統合は長期的には効率改善につながるだろう。ただし、かつて日本で都市銀行が合併したときを思い起こすと、同様に合理化でポジションが減ることが、人事的に大きな摩擦を生むのは避けられそうにない。

こうした組織改革と、エンジンとトランスミッションの組み合わせの選択肢を減らすことを主体としたコストダウンで、BMWグループは2022年までに総額120億ユーロ(約1兆5000億円)の出費を削減する計画を発表した。アウディもコスト管理基準の見直しを主とする収益改善プログラムで150億ユーロ(約1兆9000億円)を捻出するとしている。

両社ともこれらの施策はポジティブなものだと強調しているが、実際にはコストダウンの影響は現場にさまざまな形で表れるだろう。

例えばトヨタ自動車はバブル崩壊後の1995年、カローラのバンパーを突如昔ながらの黒樹脂むき出しに替えて不興を買った。2008年のリーマン・ショックのときは、報道関係者に配る資料を上質紙から藁半紙に変えて、ホチキスの針さえ節約した。品質や性能だけでなく企業としての見栄えも重要なプレミアム・ブランドが、これからどういったコスト削減を行うのか気になるところだ。

真田 淳冬 コラムニスト

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さなだ きよふゆ / Kiyohuyu Sanada

メーカーはじめ自動車業界に長らく籍を置き、1950年代から現代に至る世界中のさまざまな乗用車をドライブした経験を持つ。歴史、経済、技術といった分野をまたぐ広い知見を買った東洋経済オンライン編集部が独自に著者として招いた。

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