米ドル、5年2カ月ぶり高値 一時1ドル=105.05円、日中関係次第で円高も
[東京 27日 ロイター] - 正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ変わらずの104円後半。薄商いのなか、円が全面安となった。ドル/円は105.05円、ユーロ/円は144円付近まで上昇し、それぞれ5年2カ月ぶりの高値を付けた。
新規材料不足のなか、短期筋によるオプション関連の買いが先行した。
ドルは朝方の安値104.76円から徐々に上値を伸ばし、一時105.05円と2008年10月6日以来の高値をつけた。ユーロ/円は正午過ぎの取引で144.05円まで上昇し、同じく2008年10月6日以来の高値を付けた。ドル/円やクロス円の上昇は、日経平均株価が下げ幅を拡大する局面でも続いたが、両通貨ペアとも高値更新後は利益確定売りが流入し、小幅に反落した。
海外ファンド勢と国内証券によるオプション関連の外貨買い/円売りが円相場を先導した。
総務省によると、11月の全国消費者物価指数(除く生鮮)が5年ぶりに1%を上回った。為替市場の反応は見られなかった。
<ユーロ需要>
正午過ぎの取引で、ユーロ/ドルは1.3746ドルまで上昇した。ユーロは目先の上値抵抗線1.3715ドルを上抜けたことで、弾みがついた。
為替スワップ市場では、3カ月物ユーロ/ドルスワップがマイナス1.20/マイナス0.80ベーシスポイント。
ユーロの短期金利がドルの短期金利よりわずかに高いにもかかわらず、ドル・ディスカウント/ユーロ・プレミアムとなっている。同スワップ・スプレッドのマイナスかい離は12月5日から定着している。
原因は、欧州銀による年末のバランスシート調整で、手持ちのドルをユーロに転換する需要が根強いことがあるとみられている。
欧州中央銀行(ECB)は年初に金融機関の資産査定を実施する予定。23日の欧州市場では、金融機関が保有するスペインとイタリアの国債を圧縮し、両国債の利回りが上昇するなど、資産査定を控えた動きが債券市場でも観測された。
<米国債利回り>
前日のニューヨーク市場では日米長期金利差が拡大するとの見通しからドル/円が買い進まれた。
ロイターデータによると、指標となる米10年国債利回りは前日一時3%を付け、9月6日に付けた取引時間中としての2年ぶりの高水準に迫った。
しかし、クリスマス休暇で欧州市場がほぼ休場だったこともあり、ドル/円相場の反応は鈍かった。この日はクリスマス休暇明けの欧州勢や米国勢が市場に復帰するため、日米金利差拡大がドル/円の上昇圧力を醸成する可能性があるとみられている。
同利回りは現在、2.9831/2.9812%の気配でニューヨーク終盤の2.9920%から低下している。
市場では、住宅ローン金利や投資リターンなどの基準として利用される10年債利回りが3%を大きく超えて上昇すれば、株式などの高リスク資産の投資動向にマイナスの影響が出る恐れがあるとの見方も出ている。
「(10年米国債利回りが)3%を超えて上昇するようであれば、市場はいずれリスクオフに傾き、株価にも悪影響が出るだろう」(証券会社)とみられている。
市場では雇用関連の経済指標に注目が集まっているが、12月21日までの週の新規失業保険申請件数は、季節調整済みで前週比4万2000件減の33万8000件だった。約1カ月ぶりの低水準となり、予想の34万5000件も下回った。
米労働省は12月の雇用統計を1月10日に発表する。
<首相の靖国参拝問題>
市場では、安倍晋三首相の靖国神社参拝が引き続き話題を呼んでいる。
野村証券の金融市場調査部のチーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は「ただちに影響が出ることはないとしても、どちらかと言えば円高材料と考えている」と指摘する。
ポイントとなるのは中国向け輸出の動向で、不買運動などが広がり、日本の輸出が打撃を受けるとすれば、貿易赤字拡大という円安の作用も想定されると同氏はみている。
しかし、海外勢には安倍政権の最大の不安材料として対中関係を挙げる向きが多く、波紋が広がれば、ヘッジファンドなどの日本株買い/円売り気運に水を差す可能性があると同氏は予想している。
共同通信によれば、米政府当局者は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝について、オバマ米政権が「中韓両国の反発を招き、大きな国際問題になる」として、外交ルートを通じて首相に参拝を自制するよう求めていたことを明らかにした。米側の意向が無視された格好で、在日米大使館声明も「遺憾」ではなく、より批判的なトーンの「失望」という言葉を選んだとしている。
同当局者によると、首相がかねて靖国神社に参拝したい意向だったことを踏まえ、米側は内政干渉にならないよう非公式な形で再三にわたり自制を求めてきた。今回の参拝は約1時間前に東京の米国大使館を通じて、米政府に連絡が入ったという。
米政府当局者は「米軍普天間飛行場移設で大きな進展が期待できるタイミングでの参拝だっただけによりショックは大きかった」と述べた。ただ、同時に「日本は重要な同盟国であり、日米関係の基調は変わらない」とも強調した。
(森佳子)
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