LINEとメルカリ、「スマホ決済」で手を組む必然 他社へ呼びかけるも、ペイペイ参加は期待薄
一方のメルペイは、今年2月のサービス開始時から三井住友カードとの提携で非接触型決済「iD」に対応。QRコード決済の加盟店開拓では、すでにKDDIと組んでいる。サービスに関する説明会でも「オープンネス(開放)」という事業コンセプトを前面に打ち出した。今後も業種・業界を超えた提携発表が続くとみられる。
LINEペイ、メルペイの提携に向けた話し合いは「どちらからともなく」(メルペイ広報)、昨年末から始められたという。現状、決済対応箇所はLINEペイが133万(2018年末時点)、メルペイが135万(2019年3月時点)。特に中小商店に関しては、今後LINEペイの営業拠点がない地域をメルペイの部隊で重点的に営業するなど分担も図っていくといい、開拓の効率は高まりそうだ。
提携の範囲は加盟店開拓以外にも広がる可能性がある。サービスの作り込みやプロモーションは、引き続きライバルとして個別に行っていく方針だが、「願望という意味では、(ポイント還元キャンペーンなど)マーケティング領域でも加盟店と、両社とでタッグを組んで取り組みができると、利用者にとっていいものになると思う」(青柳氏)。
さらに今回の2社提携は、2社間にとどまらない広範な取り組みへ発展させることをもくろむ。「(業界全体で)10個あるサービスが9個になるだけでは、顧客や加盟店のペイン(悩み)は解消できない」(青柳氏)。詳細なスケジュールは未定だが、両社が主体となり設立する「モバイルペイメントアライアンス(仮称)」で、今後はほかのスマホ決済事業者にも広く参画を呼びかけていく。
2社の動きに賛同するかは未知数
複数のプレーヤーが入り込み”狂乱状態”にあるスマホ決済市場に新たな波を起こそうとするLINEペイ、メルペイだが、どれだけの事業者がこの動きに賛同するかは未知数だ。特に最大手級の楽天ペイ、ペイペイなど、自社での店舗開拓に膨大なリソースを割いている各社にとっては、現状、アライアンスへ参加するメリットは薄い。
特にペイペイは加盟店数で他社と差別化することへのこだわりが強い。営業拠点は北海道から沖縄まで、全国20を構えるほか、ソフトバンクの全国2400店、別ブランド・ワイモバイルの1000店という既存店舗を営業網として活用。数千人単位の営業人員を投入し、日々加盟店開拓にあたっている。
ペイペイの中山一郎社長も東洋経済が2月に行ったインタビューで、「他社の入り込んでいない、こんなローカルなお店でも使える、という印象を利用者に持ってもらえることは、必然的にうちの強みになる」と明言している。自社の競争力の根幹をなす部分を、ライバル企業に簡単に明け渡すことは考えにくい。
まだ拡大し始めたばかりのキャッシュレス市場だが、サービスの乱立で覇権争いはすでに激化している。緩やかな”連合軍化”で勝負に出たLINEペイとメルペイ。「独自に加盟店開拓を進めている会社にとっても、十分検討してもらえるだけのメリットを出していきたい」(青柳氏)と意気込むものの、少なからぬ困難が待っていそうだ。
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