週刊ジャンプ復刻版にハマれない45歳男の本音 40代に「ウケる企画」と「ウケない企画」の大差

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「ケッ、この頭の固いオッサンが!」と思うのもよい。だが、こうした硬直的な考えを持ったオッサンこそ、好きなジャンルについては、金と時間を惜しまない傾向にあるのも事実だ(ちなみに後にジャンプ編集部も反省をしたのか、味をしめたのかは知らないが、2018年からは『キン肉マン』や『ドラゴンボール』『CITY HUNTER』など作品ごとのベストシーンだけを集めたムック本を出版している)。

「オッサンの影響力」は侮れない

実際、こうしたオッサンの影響力は侮れない。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)を含め、ネット上では同世代と思われる人々によるオッサンホイホイ的な書き込みが多数存在するし、話題になることも多く、企業のプロモーションに生かされるケースも多い。

ここ数年、筆者が特に注目しているのは『北斗の拳』にまつわる書き込みだ。

今年1月に引退を発表した横綱・稀勢の里は「わが相撲人生に一切の悔いなし」と引退会見で語ったが、このときは「ラオウかよ」と散々ネットに書き込まれたうえ、ニュースとしても取り上げられた。『北斗の拳』関連の話題はネットでは拡散する傾向があるので、企業のマーケティングに活用してもいいかもしれない。

2013年、2ちゃんねるまとめサイト「痛いニュース」には、「【画像】 朝日新聞朝刊の『北斗の拳30周年記念全面広告』がヤバすぎると話題に」というスレッドがまとめられた。これは、朝日新聞の両面広告がヤバすぎ、ということを表したものなのだが、この広告の作り手はよくネットのオッサンの気持ちをよくわかっていた。

大ヒット作の30周年記念広告といえば、ケンシロウやラオウ、レイ、トキ、ユリア、リン、バット、ファルコ、シン、サウザーといった主要キャラを出す発想になるだろう。だが、この広告はひたすら名もなきザコキャラを前面に出した。しかも、全員が野卑た笑いを浮かべ「エラそうに新聞なんて読みやがって!!!」というコピーまである。

登場したのはそれこそ「汚物は消毒だー男」やら、「牙一族の下っ端」「獄長ウイグルの子分」「おまえのようなババアがいるか!!の男」などだ。

こうしたキャラが勢ぞろいしただけなのに、ネットで嫌われがちな朝日新聞が高く評価された。さらに「確かにこれは企画勝ちだな。ここでケンシロウを持ってくることしか思いつかない広告マンは三流。ラオウを持ってくるやつは二流」や「朝日嫌いだがこの広告は面白い」といったコメントまで書かれた。

このように中高年は趣味が固定化するものであり、若き日々に読んだコンテンツに対する異常なるロイヤルティーを示すものである。「進歩がねぇなぁ」と言うもよし。だが、これで十分幸せなのである。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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