鉄道デザインの「水戸岡・奥山」、今度はバス対決 驚きの内装とゆったり快適、どちらを選ぶか
担当者からの突然の申し出に水戸岡氏も面食らったに違いないが、「断ることは考えていなかった」と明かす。水戸岡氏は「近ツリとはなんとなく縁がある」と感じていたからだ。
水戸岡氏が世界一周旅行をしたときは近畿日本ツーリストで切符を買い、デンマークに寄ったときには近鉄百貨店のインテリア仕入れ担当者と一緒に市内の家具店を回って家具の買い付けを手伝ったこともある。
水戸岡氏が豪華バスのデザインを行うのは今回が初めてではなく、神姫バス(兵庫県)の豪華バス「ゆいプリマ」も同氏の手によるものだ。それ以外にもいくつかのバスのデザインを担当し、バスデザインの長所も短所も知り尽くしている。
その水戸岡氏は「誰も見たことがないというつもりでデザインはしていない」と言い切る。観光バスのあるべき姿は何かを考えながら、現在のデザインを少しずつよくしたいという思いで取り組んでいるという。
水戸岡氏が考えるバスの課題。それは、走行中に車内を歩き回ることができる鉄道とは違い、バスの場合、走行中はシートに座ったままということだ。だが、せめて「トイレに行くために席を立ったときに、車内を見て回ってほしい」と水戸岡氏は考えた。車内後方にあるトイレのすぐそばに、バーカウンターが設置された。バスの車内とは思えないようなゴージャスな出来栄えだ。
奥山デザインで「阪急らしさ」を
3月18日には、阪急交通社が「クリスタルクルーザー菫(すみれ)」を報道公開した。バスは日野自動車製で外観の色は一見クラブツーリズムフアーストとよく似ているが、実は、マルーンと呼ばれる阪急電車の特徴である茶系塗装の色である。
それもそのはず。クリスタルクルーザー菫のデザインコンセプトは「阪急らしさ」。名前の「すみれ」は、もちろん宝塚歌劇団を象徴する歌『すみれの花咲く頃』に由来する。高級な、豪華なといった形容詞を使う代わりに、「阪急らしさ」という一言で誰もを納得させてしまうのが、阪急のブランド力の強さだ。
その阪急らしさを実現するために白羽の矢が立ったのが、工業デザイナーの奥山清行氏だった。フェラーリなどのスーパーカーから3Dプリンターのような工業機器までさまざまなデザインを手がける。鉄道分野ではJR東日本の豪華列車「トランスイート四季島」をはじめ、新幹線E6系、E7系など多くのデザインを担当している。
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