東武鉄道が取り組む「埼玉への移住促進」大作戦 県と組み空き家活用、子育て世代にアピール
課題もある。相談会やツアーに来た人が東武沿線に魅力を感じて住んでくれるとしても、最終的に東武沿線に住むところまで至っているのかは完全には把握できない。なぜなら相談会やツアーに来た人のその後の住み替えの足取りを追うのは難しいからだ。
東武鉄道はグループ傘下に東武不動産を抱え、不動産鑑定やJTIの制度に対する仲介も行っている。しかし東武沿線に移り住む人の中には東武不動産以外の不動産会社を利用する人もおり、逆に相談会やツアーと関係なく東武不動産の仲介で制度を利用する人もいる。これは貸し手側も同様である。
そのため、取り組みの成果を測るために重要な「取り組みによって住み替えた人」の数が把握できない。埼玉県も、このプロジェクトによって案内から住み替えまで至った世帯数の把握を課題と感じているという。
その点について東武の担当者は次のように説明する。
「この住み替え支援の取り組みは、沿線に定住するきっかけをつくるための1つのメニュー。最終的に東武線沿線に住む人が増えればグループ全体の利益になるので、長い目で見ればプラスとなる」
メリットは「協働」そのもの?
ただ、東武がこの取り組みをしている大きな理由はほかにもあるように思える。それは埼玉県との「協働」そのものだ。
今回の「東武鉄道沿線における子育て世帯等に対する県内への住み替え促進と沿線地域の活性化に向けた相互連携に関する協定」の締結でのメリットを尋ねたところ、東武の担当者は次のように答えた。
「埼玉県のほうから移住に熱心な自治体を紹介してもらえる。そういったところは弊社ではわからないし、県と接点を持っていることで効率的に情報を得てやっていけるようになった。
また、県は住宅課だけではなく、ほかの課にも参加していただいている。その中で住み替え支援だけでなく地域支援もやっていこうという話になっている。そして、埼玉県とつながりができたことにより電話一本でやりとりができる関係となったというのは大きなプラスだ」
埼玉県の側からしても「鉄道事業者と連携することにより、子育て世代などの県内への住み替えを促進するために効果的な支援制度を広域的に情報発信できる」(埼玉県都市整備部住宅課担当者)という点でメリットを感じていると言い、双方の弱いところを補い合えているように見える。それは大きな収穫なのではないだろうか。
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