英EU離脱前の混乱、ユーロスター「乗らないで」 連日の遅延、実は仏税関職員のサボりが原因

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本来、ユーロスターは「発車30分前」に改札通過すれば乗れるという規定になっており、飛行機搭乗時より短い時間で手続きが済むことになっている。ところが、3月4日から、ユーロスターのイギリス行きが出発するパリ北駅で「異変」が起き始めた。

ロンドン・セントパンクラス駅の到着案内板。パリからの到着便は軒並み2時間程度遅れている。乗客は出発前にそれ以上待たされていたかもしれない(筆者撮影)

フランスを出国する人々の列がまるで進まず、1時間半以上も並ばされた揚句、諸検査を済ませて待合室に入れたころには、乗る予定の列車はとっくに出発済み……という事態が起こるようになってきたのだ。

この混乱を引き起こした張本人は、フランス側の税関職員たちだった。言い分は「ブレグジット後に起こりうる税関での検査実施により、仕事が増えるのは困る」というもの。自分たちの権益を守るために、わざと遅延行為を行い、その一方で賃上げを要求するという実力行使に出たのだ。

「合意なき離脱」で仕事が増える?

このような大混乱が起こったのは、イギリスによるEUからの「合意なき離脱」の可能性が高まったからと言える。具体的な協定が結ばれないままEUを離脱するとなると、従来のように「モノの自由な行き来」ができなくなる。その結果、イギリスとの矢面に立つフランスの税関職員たちは今までまったく不要だった「国境での荷物検査」に従事させられる(つまり仕事が大幅に増える)ことになるからだ。

パリ北駅の出国検査手前の大行列。このような状況が3月上旬から続いている(撮影:匹田篤)

当初、フランス税関職員によるこれらの対応は「ブレグジットに備えるための一時的な実験」ととらえられていた節がある。ところが連日、同じようなことが続くようになり、やがてユーロスターの運行会社は正式に「税関職員によるサボタージュの影響がある」と利用客へ説明する事態に追い込まれることとなった。

「駅に着いたら長蛇の列。様子がわからないのでとりあえず列に並んだけど、遅れの原因が『フレンチカスタムの問題だ』と聞いても、それがどういう意味なのかさっぱりわかりませんでした」。13日午後にパリからロンドンに着いた日本人観光客は、疲れた表情でこう話してくれた。

「駅に着いてから出入国検査まで5時間以上も並んでようやくパスポート検査にたどり着いた」ものの、列車に乗るという段階になって「乗る号車が決まっているだけであとはまったくの自由席だと言われた」と、段取りの悪さに不満を漏らしていた。

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