ピエール瀧を追い込む世論に見えていない本質 薬物依存症だった俳優が語る「当事者の苦痛」

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薬物依存症は誰にでもありうる問題で、ひとごとではありません(写真:freeangle/PIXTA)

「ガッカリした」「心が弱い」――。芸能人が違法な薬物を使い、逮捕されるたびにこのような声が上がる。

コカインを使用したとして、12日に麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたピエール瀧さん。過熱する報道や出演作品を自粛する動きを疑問視する声も少なくない。

当記事は弁護士ドットコムニュース(運営:弁護士ドットコム)の提供記事です

コカインを使うことは法律で禁止されている。しかし、違法だとわかっていてもやめられずに悩んでいる薬物依存症者やその家族がいることも事実だ。

俳優の内谷正文さんもその1人。内谷さんの弟は覚醒剤がやめられなくなり、薬物依存症に罹患(りかん)。家族も巻き込まれ、苦しい毎日を送ってきた。内谷さん自身も17年間、薬物を使い続けた経験があり、依存症の回復者でもある。

上映中の映画『まっ白の闇』(2017年製作)では監督を務め、実体験をもとに、崩壊した家族が立ち直る姿をリアルに描ききった。

当事者と家族、両方の痛みを知る内谷さんに話を聞いた。

過熱する報道に傷つく当事者、そして家族

薬物を使った芸能人が逮捕されるたびに過熱する報道。そして、浴びせられるバッシング。好奇心や非難の的は家族にまで及ぶことがある。

メディアを通じて、その様子を見ている人たちの中には、回復に向けて薬物依存症の治療に励んでいる当事者や誰にも相談できずに悩んでいる家族などがいる。

「薬物依存症の問題で悩み苦しんでいる当事者やその家族にとっては、つらいことだと思います。僕はあまり見ないようにしています。

薬物がもたらす弊害や恐ろしさを伝えることも必要です。しかし、同時に薬物依存症が病気であること、回復の可能性があることも知ってほしいと思います。

瀧さんにとって大切なのは、これから先をどう生きるか。新しい生き方を見つけていくことです。生き方を変えるには相当の勇気と苦労がいると思いますが、復活してほしいと願っています。立ち直ることで、過去をプラスに変えることはできます」

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