米朝会談決裂に大揺れ「韓国」の暗いシナリオ

韓国で政治的イデオロギー戦争が始まった

韓国の保守派は、文政権になって親北朝鮮的な政策に転換して以降、米韓同盟の基盤が弱体化していることに批判の矛先を向けている。問題なのは、韓国世論も文政権を支持しかねないことだ。つまり、韓国人の多くが北朝鮮とよりよい関係を築きたいと考え、南北統一への感情的アピールに心を動かされるかもしれないということを保守派は危惧している。

しかし、北朝鮮との関係改善はアメリカとの同盟関係を犠牲にしてまで、追求するものではないだろう。アメリカとの同盟は安全を保障するだけでなく、アメリカおよび世界市場へのアクセスを維持できるという点で韓国経済の安定につながっている。

北朝鮮ではなく、韓国が変わり始めている?

こうした中、アメリカとの合同軍事演習中止の発表は、韓国内で批判の対象になりつつある。「中止されているアメリカとの合同軍事演習は再開すべきだった」と韓国の日刊紙、朝鮮日報は報じた。「核武装した北朝鮮の真の脅威に直面しながら、米韓同盟は抜け殻状態にある」。

「(革新派は今後も)米韓同盟についてはリップサービスを続けるだろう」と前述の千氏は話す。「だが、心の底ではアメリカ軍との同盟は、不可欠ではないと信じているようだ。そもそも、彼らはアメリカ軍の撤退という究極の目標を掲げ、反アメリカの活動家としての政治家のキャリアを積み上げてきている。同盟関係はあるが、中身はないようなものだ」。

保守派の中には、同盟関係の今後についてさらに暗いビジョンを抱いている人もいるが、おおかた公にはしていない。文大統領を支持するメディアに「復古的」というレッテルを貼られるどころか、「親日派の子孫」などと批判されるのを避けるためである。

保守派が懸念しているのは、北の独裁政権が変わるのではなく、逆に母国が変わり始めていることだ。「朝鮮戦争の記憶を持つ世代が消滅しつつある中、韓国社会の共産主義に対する無知はひどいもので、『赤』という用語がどこから来たのかを知る政治家やメディア関係者はほとんどいない」と、ある著名な保守的知識人は匿名を条件に話す。

これまでこうした見解は、保守的な政治家や彼らを支持する限られたメディアのみが示してきたが、ここへきて政治的イデオロギー戦争がより広範に行われる兆候が出てきている。冒頭の中央日報によるスクープ記事もその1つと言えるだろう。米朝首脳会談決裂によってにわかに緊張感が高まっている今、文政権は韓国内からの「攻撃」に備えたほうがいいかもしれない。

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