「東京パラ」に懸念、バリアフリー未整備の内実 国・都の対策進むも必要な客室数を把握せず

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この指摘を受けて、国土交通省はバリアフリー客室の基準を見直した。50室以上に客室数の1%以上(小数点以下切り上げ)の設置を義務付けたのだ。この改正法の施行は、2019年9月だ。

また東京都も、今後新築や増築する部分の床面積が1000平方メートル以上のホテルに、客室は80センチ以上、トイレや浴室は70センチ以上の出入り口を全室で確保することを義務化する条例案を作成。現在開会中の議会に提案しており、今年9月の施行を目指している。すべての客室で誰もが使いやすいユニバーサルデザイン化を目指すもので、国内では画期的とも言える。

条例施行でも、状況は変わらない?

ところが、条例が今年9月に施行されても、来年のパラリンピックまでにはほとんど状況は変わらないという見方が主流だ。

東京都ホテル旅館生活衛生同業組合は、「組合に加盟する施設は10年以上前から改修に取り組んできたので、これから改修する動きはそれほどないのでは」と、各ホテルの改修はすでに終わっているという見方だ。また現状については「客室で80センチ以上、トイレと浴室で70センチ以上の出入り口を確保できているホテルは現時点でほとんどない」と話している。

一方で、トイレや浴室の出入り口を70センチ以上とした基準自体にも疑問の声も上がっている。96の障害者団体が加盟する認定NPO法人「DPI日本会議」の今西正義顧問は、東京都が机上だけで基準を作ったとして、問題点を指摘している。

「私たちが実証実験をした結果、トイレと浴室の出入り口に75センチ以上の幅がなければ、直角に曲がって入ることができない車いすは多いと考えています。東京都の条例がモデルになって、他の地方自治体が同じ条例を作ったときに、せっかく義務化したのに結果的に使いづらい、もしくは使えない部屋がたくさんできる、ということが起きるのではないかと懸念しています」

国と東京都、どちらの見直しも、今後バリアフリーの客室を増やすという点で意味があるが、決定のタイミングは遅く、どこか中途半端だ。いずれにしても、来年のパラリンピックまでに客室が少ない状況が改善されるかといえば、疑問符がつく。

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