エスカレーター「片側空け」は本当に危険なのか 重要なのは「手すりにつかまる」かどうかだ

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日本エレベーター協会の資料に「階段上の歩行(段差状部分の歩行)」を示す具体的な数値はない。乗り方不良という文言があるけれども、これは「手すりにつかまらない」「無理やりベビーカーを乗せる」「手すりからはみ出して構造物にぶつかる」「両手に荷物を持ち不安定である」「上方から荷物が落下してきた」「逆走」「安全装置による緊急停止」「酔っ払いのふらつきに巻き込まれる」なども含まれている。

片側空けが危険というならば、ここはきちんと示して納得させてほしい。エスカレーターを歩いて上る人は手すりにつかまらないから危険だというならば、手すりをつかんで歩けばいいということだ。片側空けより手すりにつかまるほうが重要であり、その意味では「手すりにつかまろうキャンペーン」は間違っていない。

つまり、「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンは「片側空けはやめようキャンペーン」ではない。ということは、2018年12月からのJR東日本の取り組みが実質的には初のものといえそうだ。

日本の「もの作り」のセンスで解決すべきだ

空港や東京駅の京葉線乗り換え通路にある動く歩道を利用すると、多くの人々は歩いている。それがエスカレーターになると「階段状だから危険」になる。これは納得できないと感じる人も多いだろう。片側空けに対する危機感を持つ人は少ない。しかしエレベーター協会の公式サイトは「歩行禁止」を掲げているし、消費者庁では「エスカレーターの安全基準は、ステップ上に立ち止まって利用することを前提にしています」と明記されている。

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念のため、エスカレーター製造会社に問い合わせてみた。「階段上を歩くと危険といわれ続けるくらいなら、むしろ、歩いても危険ではないエスカレーターを作ればいいのではないか。もの作りに長けた日本らしい解決方法ではないか」

匿名でという条件で得た回答は「私たちの製品は、階段上で歩いたくらいで壊れたり危険な状態になったりすることはない」だった。そこには日本のもの作りに関わる人の誇りと責任と自信を感じた。

利用者のニーズをくみ取り製品化することに長けている日本のメーカーなら、エスカレ―ターの上で歩けないエスカレーターを作れるはずだ。片側空けができないように1人乗りにしたエスカレーターはすでに登場している。これ以外にも、ステップの後部をわずかに上げると、やや前のめり感が出るし、ステップの段差をより高くする、逆にステップの段差を低くするなど、歩きたい人にだけ意地悪な状況を作ることも考えられる。

ステップを前後方向に長くすれば、ステップ内で歩幅が増えて歩きにくい。車いすやベビーカーがを1つのステップで乗れるという利点もある。

心理作戦はどうだろう。すべてのステップに横断歩道の手前で見かけるような「止まれ」や「あしあとマーク」をペイントする。

あるいは、段をやめて、急坂の動く歩道にする。これは会津若松の白虎隊墓所に通じる飯盛山スロープコンベアという例がある。長崎のグラバー園の動く歩道も坂道だ。傾斜角が大きく歩く気分になりにくい。

水掛け論や効果のないポスター貼りよりも効果的だ。これがもの作りニッポンらしい解決方法ではないか。

杉山 淳一 フリーライター

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すぎやま じゅんいち / Junichi Sugiyama

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴40年超。全国の鉄道路線完乗を目指してコツコツと旅を重ねている。鉄旅オブザイヤー選考委員。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

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