エスカレーター「片側空け」は本当に危険なのか 重要なのは「手すりにつかまる」かどうかだ

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エスカレーターの片側空けをやめて全員が2列に並ぶと、エスカレーター本来の輸送力をフルに使える。それはわかる。問題は立って休みたい人と急ぎたい人のバランスが崩れた場合だ。急ぎたい人がほとんどいないにもかかわらず片側空けが行われると、輸送力は半減し、エスカレーター待ちの行列が長くなる。東京駅丸の内地下改札から丸の内中央口改札横に出る2機のエスカレーターでよく見かける光景だ。大きな鞄を持つ旅行者が多く、立ち組が多い。

全員が2列に並んで立てば輸送効率は最大化され、待ち行列の解消も早い。確かにそのとおりだけど、人は理屈では動かない。全員の輸送時間は平均化されるけれども、急ぎたい人の不満は大きくなる。一方、並ぶ人はいつまでも並べる。ラクをしたい人は行列を苦としない。輸送効率論は利用者の満足度を考慮しない空論だ。効率第一で言うならば、2列に並んで全員が歩いたほうが最大化できる。

急ぐ人は階段を利用してくださいというのも変な話で、急ぐからエスカレーターの推進力を利用したいわけだ。なぜ急ぎたい人が階段とエスカレーターのスピード競争を強いられるか理解できない。むしろ急がない人は階段をゆっくりと休憩しながら上っていくべきだ。

「エスカレーター歩きは危険」は数字で示されていない

では、「エスカレーターの歩行は危険」という指摘は正しいだろうか。確かに立ち止まるよりは危険度は高そうだ。しかし、エスカレーターは「歩行だけが危険」というわけではない。エスカレーターの事故について、日本エレベーター協会は5年ごとに利用者災害の調査報告を公開している。最新データは2015年10月の「Elevator Journal No.7」に掲載されている。調査時期は2013年1月から2014年12月まで2年間。この2年間の災害発生件数は1475件で、うち交通機関で設置されたエスカレーターが751件と約半数だ。JRをはじめ鉄道関連で解決する手段が必要だ。

災害事象別の件数を見ると、転落事故が5件、挟まれ事故が312件、転倒は1023件で圧倒的に多い。また、転倒事故の内訳として、乗降口は284件、階段上は739件である。乗降口の危うさは多くの人が感じるだろう。だれでも「おっとっと」とぐらついた経験はあるはず。階段上(エスカレーターの段差発生部)は739件で、やはりエスカレーター災害の約半数である。ただし、このデータは災害が起こった場所を示すだけで、階段上の災害がすべて歩行ではない。

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