広告収入の落ち込みが深刻、テレビ局総崩れで瀬戸際の制作会社

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番組の質の低下でさらなる視聴者離れも

広告収入は景気と連動するため、当面、厳しさが続く公算が大きい。そのため09年4月の番組改編では、一層の制作費削減が行われそうだ。すでに日テレは来期の制作費を、今期の見込みから約160億円減の1000億円以内に抑えると明言している。TBSも制作費が膨張しがちだった平日夜の時間帯は、手堅く報道番組に変更する。

そうなると、制作会社がさらなる苦境に追い込まれるのは必至。ある制作会社社長は「こんな状況でもテレビ局社員の平均年収は1000万以上ある。テレビ局は本当に厳しいのか。しかも、うちは人件費をさらに削らないとやっていけない。銀行借り入れも難しく、いつ潰れてもおかしくない」と不満を漏らす。

制作費の大幅カットで懸念されるのは番組の質の低下だ。特にリサーチや取材に時間のかかるドキュメンタリーや情報系の番組で、ヤラセや捏造が起こりかねない。「今だって局や視聴者に気づかれていないものは意外とあるが……」と、前出の制作会社社長は警鐘を鳴らす。番組の質の低下で視聴者のテレビ離れが起こり、さらに広告収入が減少するという負のスパイラルに陥る懸念もある。

民間放送連盟の広瀬道貞会長は10月の民間放送全国大会の場で「局と制作会社は二人三脚でつながっており、苦しいときこそ連携すべき」とコメントした。だが、制作会社側の業界団体幹部は「言葉で言うのは簡単。実際の行動で示してほしい」と不満を募らせる。かつてない逆風が吹きすさぶ中、このままでは業界全体の地盤沈下は免れない。

(中島順一郎 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)

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