なぜ中小企業にこそ「健康経営」が必要なのか

L・グラットン氏「人生100年時代の重要課題」

経済産業省の西川氏も経済政策の観点から、健康と生産性の損失の問題を指摘する。同氏は、「米国商工会議所の2016年の『健康と経済』についてのレポートによると、従業員の早期退職に加えて、病気による欠勤や体調不良などで、先進国のGDPが5〜8%失われている」という衝撃的なデータを示した。

経済産業省ヘルスケア産業課長の西川和見氏。企業の健康経営施策を支援する(撮影:今井康一)

各国別に見ると、すでにGDPの損失額は日本で7%、米国8.2%、中国5.4%、マレーシア6.3%などとなっている。それが2030年には日本8%、米国8.1%、中国6.4%、マレーシア7.1%になると見込まれている。

こうした中、西川氏は「設備投資や研究開発と同じぐらいの位置付けで、健康関連に投資をすることが必要」と語るとともに、「健康経営は生産性の向上につながるだけでなく、企業価値を高めることにもなる」と説明。

ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の側面からも評価が高まり、投資家の注目を集めやすくなることや、健康経営が企業のリスクを下げて、融資や保険加入の際の金利や保険料引き下げなどで優遇されるメリットがあるとも述べた。

そのうえで国としても、健康経営にかかわる各種顕彰制度の普及推進に努めていることや、中小企業の健康経営を支える日本商工会議所の取り組みをバックアップしていることなども強調した。

中小企業が健康経営に成功する3つのポイントとは?

経済産業省の健康経営にかかわる顕彰制度の一つに、「健康経営優良法人認定制度」がある。これは、特に優良な健康経営を実践している法人を、「大規模法人部門(大企業など)」「中小規模法人部門(中小企業など)」に分けて認定する制度だ。初回の2017年度は大企業などが235法人、中小企業などが318法人認定された。2018年度はそれぞれ541法人、776法人と倍増している。

健康経営を推進する浅野製版所経営企画部主任の 新佐絵吏氏。産業カウンセラーの資格も持つ(撮影:今井康一)

この健康経営優良法人(中小規模法人部門)に2年連続で認定されたのが、広告製版・DTP・デザインなどを手掛ける浅野製版所(東京・築地)。従業員数45人で1937年創業、大手広告代理店の下請けという典型的な中小企業だ。

健康経営の旗振り役を担った同社経営企画部の新佐氏は「当社が健康経営を推進する理由はシンプルで、社員にしっかり働いてもらって生産性を上げて、事業を継続していくためだ」と説明。「社員を健康にすることが最終目的ではない」とも明かした。

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