日本にも影響及ぶ朝鮮戦争「終戦宣言」の現実味 トランプ大統領はそのカードを用意している
1953年に休戦となった後、アメリカは韓国と米韓相互防衛条約を結び、在韓アメリカ軍の駐留を続けている。この条約の中には、韓国が北朝鮮を含む第三国から攻撃された際に自動介入する条項は明記されていない。その代わり北朝鮮との最前線であるDMZ(軍事休戦ライン)近くに、アメリカ軍の精鋭部隊が配置されてきた。
万が一、南北で軍事衝突が起きた場合、このアメリカ軍部隊も巻き込まれるため、「トリップ・ワイヤ(導火線)」の役割を果たし、戦闘に参加せざるをえない仕組みだ。
アメリカ軍は地球規模での再配置、効率化を進めてきたが、在韓アメリカ軍は事実上、朝鮮半島に張り付け状態になっていた。トランプ大統領は、この状態に強い不満があるようだ。
トランプ政権の内幕を暴いた『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』(ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社)にこんなシーンが描かれている。
韓国に米兵を駐留させるためにアメリカが35億ドルも支払っているとして、トランプ大統領が「駐留させている理由がわからない、全部こっちへ呼び戻せ!」と、部下に怒鳴るシーンだ。
在韓アメリカ軍は経費がかかるだけで、十分な成果を挙げていないというのは、トランプ大統領の強い信念なのだ。正式な戦争終結には、関係国による「平和協定」締結が必要で、時間はかかる。
しかし、いったんアメリカが終戦を宣言すれば、在韓アメリカ軍の駐留理由は弱くなり、規模は現在の2万8500人から縮小されていくだろう。
防衛費分担金で米韓摩擦
終戦宣言が出されるのではないかとの見方は、昨年6月の米朝首脳会談前にも盛んに出された。
首脳会談後の会見でトランプ大統領は、「今では、われわれは皆、すぐにこの戦争が終わると期待しています。すぐに終わるでしょう」と語っている。このときは、非核化の手順をめぐる対立から、終戦問題は立ち消えになっているが、今年は、現実味がある。いや、米朝は次回の会談で終戦を宣言する可能性が高いと私は見ている。
いくつかの理由があるが、その1つは2019年以降の米韓の防衛費分担金を決める協議が難航していることだ。
これは、日本で言う「思いやり予算」に当たる。在韓アメリカ軍基地内で働く韓国人の雇用費用や施設の建設費などを負担する。
5年に1回の見直しとなった昨年の協議はもめにもめ、いまだに決着していない。アメリカ側が、韓国の昨年負担した約9600億ウォン(約960億円)を、約1兆3000億ウォン(約1270億円)へと大幅に引き上げることを要求したからだ。これに文在寅大統領の支持基盤である市民団体が反発し、文政権を後押ししている。
加えて、南北間の軍事緊張の緩和もある。南北は昨年9月、南北間の敵対行為中止などを盛り込んだ軍事分野合意書を締結し、DMZにある監視所の撤去、地雷の除去など実施してきた。南北間では事実上、終戦が実現したとみる向きもある。こういった和解ムードを利用して北朝鮮は、韓国の協力を得ながら経済発展を狙っているようだ。
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