日本人は「海の不健康」の深刻さをわかってない ごみ、酸性化、貧酸素化…問題は山積みだ

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昨年6月にカナダ・シャルルボアで開かれたG7サミットでは、「海洋プラスチック憲章」が採択された。日本とアメリカは不参加だった。安倍晋三首相は2019年に大阪で開くG20でも海洋のプラスチックごみ問題に取り組みたいと表明。現在、日本政府は遅ればせながら、「プラスチック資源循環戦略」を検討中だ。

急速な海洋環境の悪化

海洋のプラスチックごみ問題は主に欧州で注目されたが、日本の研究機関の貢献も大きかった。国立研究開発法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)はこれまで、深海の底でレジ袋をはじめとしてさまざまなプラスチックごみを映像や画像に収めてきており、2017年4月には、こうした海底ごみの情報を整理し、「深海デブリデータベース」としてインターネット上で公開を開始した。

海底約6000㍍にころがるマネキンの首(写真:海洋研究開発機構提供)

1991年、有人潜水調査船「しんかい6500」の調査で、日本海溝の水深6280メートルの深海の底でマネキンの頭部を発見、撮影した画像などが、海洋ごみの実態を突き付けた。クジラやアザラシなどが大量のプラスチックを飲み込んで死亡したり、ウミガメの鼻にプラスチック製ストローが突き刺さったりした海洋生物の被害のニュースが世界に広がった。さらに、海に漂流するプラスチックが海中の有害化学物質を吸収し、その「運び屋」となることが研究でわかってきたことから、生態系への悪影響が懸念されている。

一方、地球温暖化による海洋環境の変化は、従来考えられていたよりはるかに深刻であることが最近になってわかってきた。

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