小沢氏が政権獲得前に留意すべきは、細川、羽田両政権からの教訓

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小沢氏が政権獲得前に留意すべきは、細川、羽田両政権からの教訓

塩田潮

 支持率は急落したが、自信家の麻生首相に政権投げ出しの気配はない。だが、末期と見て早くも後継候補が取り沙汰され始めた。
 与謝野経財相や小池元防衛相らの名前が噂に上るが、ポスト麻生の本命は小沢民主党代表だろう。健康不安説が消えないが、麻生辞任なし、総選挙での民主党優勢という情勢に変化がないなら、常識的に見て次は小沢首相である。

 世論調査の「麻生対小沢」の期待値でも麻生首相を上回った。だが、「小沢首相で日本は大丈夫か」という不安がつきまとう。12月8日発表の共同通信の調査は「小沢首相がふさわしい」と答えた人にその理由を聞いている。「政策に期待できるから」「民主党だから」「指導力があるから」はいずれも20%超だが、「信頼できるから」「外交で日本の顔としてふさわしいから」は6%に満たない。民主党の政策を果敢に実行する剛腕指導者というイメージは浸透しているが、信頼感に乏しく、外交力は未知数と国民は見ているようだ。

 その小沢代表は「全党による超大連立の選挙管理内閣構想」を持ち出す一方、「1月通常国会冒頭解散も」と唱え続ける。自民党離党者との連携については「現段階ではない」と言い切り、総選挙による政権奪取を目指して選挙対策の全国行脚に明け暮れている。
 過去に自民党政権打倒の経験は細川政権樹立の一度だけだが、その立役者だった小沢代表が、いま政権獲得を前にして留意すべき点は、細川、羽田両政権の成功と失敗の教訓だろう。成功は政治改革というエネルギーの結集、失敗は与党分裂であった。外交手腕はともかく、信頼の獲得には、与党の結束とともに、自民党政権ノーという国民の声をエネルギーとして結集するパワーが不可欠だ。

 「選挙の小沢」「政局の小沢」だけでなく、総選挙直前のいまこそ、エネルギーの結集を目指して新たなプログラムを打ち出す「政策の小沢」で勝負を。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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