日立、原発プロジェクト凍結は大英断なのか

国内原発メーカー3社の再編・統合へ鳴る号砲

近年、先進国での原発計画は死屍累々だ。仏アレバはフィンランドで巨額損失を被り、解体に追い込まれた。東芝子会社だったアメリカのウエスチングハウス(WH)はアメリカ国内で原発新設を目指したが、建設費高騰で倒産、東芝は債務超過に陥った。

日立のホライズンに対しても、株式市場の懸念は根強かった。日立がいくら経済合理性と繰り返しても、撤退の判断はできず、最終的に巨額損失を被るのではないか。そんな見方が多かった。

鉄道事業など他の事業への影響を考えると、イギリス政府の心証を悪くするわけにはいかない。経団連の会長は日立の中西宏明会長が務め、原発輸出を成長戦略の柱とする安倍政権への配慮もある。まして、すでに3000億円を投資しており、撤退となれば巨額の減損を迫られる。最高益を見込んでいた2019年3月期が一転大幅減益になるなど、ホライズン・プロジェクトをやめない理由はいくらでも思いつく。

日立経営陣が問われる責任

東芝がその傷を深くしたのは、高値づかみしたWHののれん減損を避けようとしたことが一因にある。3000億円はもちろん巨額だが、幸い日立の経営が傾くほどではない。東原社長は「今の時点で凍結ならそれほど経営判断は間違っていない」と強調したが、早めの損切りは評価できるだろう。

ただ当然のことながら、3000億円もの損失を計上する経営の責任は間違いなくある。2012年の買収は、元駐日イギリス大使で当時、日立ヨーロッパの会長で日立取締役でもあったスティーブン・ゴマソール氏が持ってきた話だった。

ホライズンは日立社内で中西会長案件と位置づけられている(撮影:大澤誠)

当初懐疑的だった中西会長(当時社長)もイギリス政府高官の訪問を受けて積極姿勢に転じた。イギリス政府のコミットがあればプロジェクトのリスクは許容できると判断し、反対する財務部門を説得した。

中西会長はかつて東洋経済の取材に「リスクは確かにある。あるけれどもマネージできる範囲であると途中で確信した」と語っていた。しかし、日立にとっての誤算はイギリス政府のコミットが期待したほど強くなかったことだ。

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