アマゾンに勝る仕組み持つ中国EC企業の存在 難題のネットスーパーで先行する京東集団

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中国北京市にある京東(ジンドン)集団のスーパー。天井近くにあるディスプレーで商品の産地を表示するなど最先端技術が盛り込まれている

インターネット通販市場において、全世界で圧倒的な規模を誇るアマゾン。書籍を手始めに、家電、玩具などEC(ネット通販)で取り扱う領域を次々と広げ、アメリカの書店や家電量販店などを駆逐していった。

「生鮮食品はECの参入が難しい最後の未開拓領域。アマゾンでも難しいだろう」。

『週刊東洋経済』1月21日発売号(1月26日号)の特集は「アマゾンに勝つ経営」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

当初、EC(電子商取引)や小売業界の関係者の多くはそのように見ていた。だが2007年、アマゾンはネットで注文を受けて既存店舗から個人宅に商品を配送するネットスーパーを米国で立ち上げ、2017年からは日本でも同様のサービスを開始した。

アマゾンの食品強化に対抗すべく、イオンやイトーヨーカドーなど国内スーパー大手はネットスーパーのサービスを拡充。西友はEC大手の楽天と提携し、「楽天西友ネットスーパー」を2018年10月に開始した。

ただ、「ネットスーパーは、店舗販売より手間やコストがかかるが、それを販売価格に転嫁できず、どこも儲かっていない」と、ネットスーパー関係者は明かす。

ポストアマゾン最右翼 中国ジンドン驚異の物流

日本でネットスーパーが苦戦しているのに対し、圧倒的な勢いでECでの食品販売を拡大している国がある。中国だ。ECでの食品売上高は日本が約8500億円なのに対し、中国はその3倍以上の約2兆9000億円。しかも、2012~2016年の4年で4.5倍も伸びている。

中国では、ネットと実店舗の融合が猛スピードで進んでいる。食品も同様で、注文からわずか30分で自宅まで商品を届ける仕組みを確立している企業もある。

京東(ジンドン)集団──。日本ではあまり知られていないが、中国では圧倒的な認知度を誇る企業だ。2015年度のEC売上高ランキングには、世界1位のアマゾン(約8兆5000億円)に続き、ジンドン(約2兆9000億円)が名を連ねる。

『週刊東洋経済』は1月21日発売号で「アマゾンに勝つ経営」を特集。小売業者を次々と駆逐していくアマゾンに対抗するためのキーワードとして「ラストワンマイル」「サブスクリプション」を挙げ、ジンドンの実態に迫っている。

実は、このジンドンはアマゾンにも勝る仕組みを構築している。

倉庫や実店舗から消費者の自宅まで、いわゆる「ラストワンマイル」のすべてを自社トラックや自社配送員でカバーしているのだ。アマゾンも自社トラックの保有や専用倉庫の整備を進めているが、さすがにすべて自前とまではいかない。ラストワンマイルを制する者はECを制する。

アマゾンに勝つ経営を実践する最右翼、ジンドンへの注目が高まっている。

『週刊東洋経済』1月26日号(1月21発売号)の特集は「アマゾンに勝つ経営」です。
梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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