会場最寄り駅を閉鎖、英国五輪「逆転の発想」 長い距離を移動させて、観客の分散を促す

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2020年開催の東京五輪では競技会場への交通アクセスが課題となっている(写真:Getty Images)
東京五輪の開催が迫るなか、競技会場への交通アクセスをどう確保するかが喫緊の課題として浮上している。朝の通勤ラッシュ時間帯と開催時刻が重なる競技の場合、通勤客に五輪観戦客がプラスされ、下手すると交通ルートがパンクしかねない。
参考になるのが他国の事例だ。
「2012年のロンドン五輪では、馬術競技の行われたグリニッジの競技会場では、五輪当日に最寄り駅のカティサーク駅を閉鎖してしまった」
そう語ったのは、2001~2012年にロンドンに在住し、競技場や地下鉄駅の現場監理に携わった建築家の山嵜一也(やまざき・かずや)さんだ。ロンドンの人々の意外な発想と五輪の位置づけを山嵜さんに聞いた。

「便利」が最善でないという選択

――なぜ最寄り駅を閉鎖したのですか。

2万3000人収容の競技場で競技が終了すると、観客の大半が一気にカティサーク駅に向かう。しかし、ロンドンの駅は主要駅以外、ほとんど小さくてホームも狭く、大量の乗降客に対処できない。そこで、あえてこの駅を閉めて、少し離れた周辺のグリニッジ駅、メイズヒル駅、ブラックヒース駅、またテムズ川の水上バスなどに人の流れを分散させた。最寄りのバス停も同様に閉鎖した。

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駅と競技場との距離が長いと、歩いているうちに自然に人の密集度は低くなる。途中に広場があれば人が滞留してにぎわいを生むし、アクシデントがあったときの避難場所としても機能する。また、周辺の飲食店などを利用する経済波及効果も期待できる。その代わり、時間がかかることは繰り返し知らせていた。個性的で人気のあった当時のボリス・ジョンソン市長の、「Don't get caught out(おまえたち、遅れるなよ)」というような口調のアナウンスは印象的だった。

東京の国立競技場は、1964年当時にその点を考えて立地されたのか、外苑前駅、千駄ヶ谷駅、さらに今では国立競技場駅もできて、複数駅に分散しており、少し歩けば表参道や原宿といったおしゃれでお店もたくさんある繁華街にも行ける、いい立地といえる。

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