日本の大学の医学部教育は何が問題なのか?

医療介護の一体改革に立ちはだかる大きな壁

次は、医学部の入試に関する私の発言である(2016年3月31日第4回医師需給分科会)。

1県1医大構想と自由競争の帰結

私は以前(2006年ごろ)、医学部の偏差値を調べたことがあります。どうして地域医療の崩壊などという問題が起こってくるのかと思って調べてみたわけですけれども、1990 年代に医学部の偏差値がものすごく上がっている。
 これは1990 年にバブルが崩壊して、日本のエリート層がたたかれていく中で、親が子供をどう育てていこうかというようなことになっていくと、やはり手に職をという感じになっていくのだろうと思う。1997 年に金融危機を経験した韓国も、それ以降、国がなくなっても子供が生きていけるように、労働市場が不安定な社会でも子供が生きていけるようにという形で医学部偏重が起こってきます。
そういう環境変化が起こった中で、1973年の1県1医大構想の大学入試のところをずっと自由化していると、地方のほうは10月ぐらいまで運動会をやっていますので、都心の進学校に入試の段階で負けていきます。大学入試の側面でこうした大きな構造変化が起こっている中では、地域枠といっても地元出身者の地域枠でないと、これは機能しないというのを私はもう10年近く前から言っている。
1県1医大が構想された1973年とは社会構造が大きく変わっておりますので、1県1医大構想の医学部入試のところを自由化していると、かつては想像していなかった問題が生じてきたことになるので、文部科学省は少し考えてもらいたい。

都心の進学校の卒業生は、地方の医学部に自動車合宿免許を取得しに行くような気持ちで入学し、免許を取ったら都心に戻る。これでは1県1医大構想の理念はたまったものではなく、そういうことが起こっているだろうと予測して、医学部偏差値を調べたわけである。

そうした中、2008年から、医学部の期限を定めた臨時的な定員増として、県が自県の地域医療の担い手を育てるために奨学金を貸与する「地域枠」が導入されている。しかし、この地域枠がどのように運営されているのかに関しては、誰もフォローアップしておらず、その実態はよくわかっていなかった。

本来、文科省が把握しておくべきなのであるが、待てど暮らせどその様子を見せなかったので、おそらく業を煮やしたのであろう厚生労働省が、2018年9月~10月に初めて調査した。

すると、地域枠学生の選抜方法については大別して2種類ある――一般枠と別枠の募集定員を設ける「別枠方式」と、一般枠等と共通で選抜し、 事前または事後に地域枠学生を募集する「手挙げ方式」――ことがわかった。

そして地域枠については、別枠方式の場合、募集数の95%に奨学金の貸与実績があるのに対し、手挙げ方式だと69%しか貸与実績がなく、離脱の状況についても、別枠方式の場合、94%が義務履行すると推定されるのに対し、手挙げ方式だと84%しか義務履行されないという結論であった。

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