ニセ切符対策で進化、中国の鉄道「現金レス」 「窓口に殺到」は昔の話、スマホで車内出前も
ところが、この「ダフ屋の切符」が本物ならまだしも、偽物というケースがしばしば起こっていた。厚手のボール紙製で地紋が入った硬券を使っていた時代は偽造にも手間がかかったが、1990年代後半から使われるようになったコンピューター端末で発券される切符は家庭用プリンターでも偽造できそうな作り。鉄道の切符をよく知らない地方出身者たちはだまされることもあったかもしれない。
そこで、偽物の切符と転売屋に業を煮やした中国の鉄道当局は、対策として切符の購入時に身分証明書(外国人はパスポート)の提示を求めるようになった。本人しか使用できないようにしておけば転売は避けられるし、わざわざ自分の名を入れた偽物の切符を作って乗るやからはいない。購入側からすれば手間が増えたものの、セキュリティーの向上という点では進歩が見られた。
中国では目下のところ「名前と身分証明書番号」が刷り込まれたQRコード付きの紙の切符が広範に使われており、乗客は自動改札機を通ってプラットホームへ向かうことになる。このレベルなら特に目新しい技術ではないが、現在はさらに次の段階に進化している。
駅で切符を買おうと売り場に行くと、拍子抜けするくらい人が並んでいない。列には人がいるにはいるが、会話に耳を傾けると発車時間を尋ねたり、ずいぶん先の列車の空き状況を聞いていたりと、切符を買っている人がいないのだ。
オンライン購入で窓口ガラガラ
職員に尋ねてみると「ほとんどの乗客はオンラインで購入しているから、窓口に来る必要がなくなったんです……」。周りを見回すと、駅の自動券売機には列ができている。人々が券売機を扱う手元を見てみると、事前にオンラインで手配した切符のデータを各自の身分証に読み込ませているだけだ。これなら駅で現金を出したり、クレジットカードで買ったりする必要はない。
券売機を利用していた現地の女性に声を掛けてみると「そもそも週末のこんな時間(土曜の午後)に駅に来て、席なんて余っているわけないじゃないですか。出かける予定が決まったらその場でスマホを使ってサクッと予約しちゃうんですよ」ということだった。
中国では、身分証明の番号が全国民に付与されており、その番号が表示された「第二世代身分証」と呼ばれる非接触式ICカードの携帯が義務づけられている。このICカードに切符のデータを読み込ませれば購入者とひも付けることができるので「なりすまし乗車」が防げる、というわけだ。
ただ、身分証のない外国人はどうするか?という問題が頭をもたげてくる。中国鉄路客戸服務中心(カスタマーサービスセンター)のサイト(12306.cn)は、中国国内の携帯電話番号がないと予約者登録を受け付けない。一部の中国系オンライン旅行会社が外国人の切符購入を受け付けているので、そういったサービスを利用することになるが、結局は現地の駅などで切符を引き取る手間が残る。
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