横須賀線車両、新型の「顔」から消えるのは何? 緊急時の避難に「貫通扉」はなくても問題ない

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同社によると、事故などで線路上に避難しなければならないときには「側面扉から避難することが可能」という理由で前面貫通扉を設けなかった、とのことである。側面から脱出できるだけトンネルの幅があるということであり、前面に貫通扉がなくても安全性に問題はないということだ。

京葉線を走るE233系。東京駅付近では地下区間を走るが、貫通扉はない(写真:OGC / PIXTA)

同様の事例はすでに存在する。その1つは京葉線である。こちらも、普通列車の車両(E233系5000番台)は前面に貫通扉がない。同線を走る特急車両(E257系500番台)は貫通扉があるものの、5両編成を2本組み合わせるためのものである。

では逆に、なぜ地下鉄の車両には貫通扉が必ずあるのだろうか。東京メトロや都営地下鉄の車両は、デザインはそれぞれ異なるものの前面に貫通扉がある。地下鉄に乗り入れるほかの鉄道会社の車両も同様だ。

これは、国土交通省の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」で必要とされているからである。「地下鉄等旅客車」という車両群があり、この省令で定められている火災対策にのっとっていなくてはならない。

どんな基準があるのか

前面貫通扉についてどんな基準があるのか見てみよう。同省令の第75条には「貫通口及び貫通路の構造」という項目がある。

第75条:旅客車には、旅客が安全かつ円滑に通行することができる貫通口及び貫通路を設けなければならない。ただし、専ら車両一両で運転するものにあっては、この限りでない。
2:施設の状況により非常時に側面から避難できない区間を走行する列車は、その最前部となる車両の前端及び最後部となる車両の後端(最前部が機関車である列車にあっては、車両の最後部となる後端)から確実に避難することができるものでなければならない。

最初の項目は主に車両間の貫通路(連結部分)について触れており、非常口としての貫通路に関する記述は後段だ。この省令を見ると、側面から避難できない区間(つまりトンネルが狭い区間)を走行する列車は前後から確実に避難できなければならないが、側面から避難が可能なら前面に避難用の扉がなくてもいいと解釈できる。

この省令には「解釈基準」というものがあり、こちらを見ると「建築限界と車両限界の基礎限界との間隔が側部において400mm未満の区間を走行する車両」は1車両に貫通路が2つ必要との基準が示されている。逆に言えば、トンネルと車両の隙間が40cm以上あれば、貫通路は隣の車両と行き来するための1つだけでもかまわないということだ。

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