ブレーク寸前「中東料理」がじわじわきている インパクトはないがナチュラルでやさしい
フムスは、パレスチナやレバノンなど東部地中海沿岸地方で最もポピュラーな料理だが、イスラエル建国後は東欧系ユダヤ人(アシュケナージ)が取り入れたほか、中東や北アフリカのアラブ諸国から難民として流入してきたユダヤ人(スファラディム)たちも、独自のフムスを持ち込んだ。
パレスチナやレバノンは、フムスの本家本元を自任するが、イスラエル人たちもフムスを代表的なイスラエル料理に挙げている。このため、巨大なフムスをめぐるギネス記録の争いは熾烈を極めている。
国家なき民族となって国際政治の辛酸をなめているパレスチナ人にとって、料理は祖国の文化を子孫に継承するための重要な要素になっている。ヨルダン川西岸を占領するイスラエルは、パレスチナの料理まで乗っ取ろうとしていると警戒心は強まるばかりだ。
名物料理にも中東情勢の影
料理の世界は、激動する中東情勢とも無関係ではいられない。エジプトを代表する庶民の料理で国民食ともいわれるコシャリにも最近、変化が見られるとの情報が現地在住者から飛び込んできた。コシャリは、コメやマカロニ、パスタという炭水化物の材料を中心に、ひよこ豆、レンズ豆を混ぜ、揚げ玉ねぎやトマトソース、唐辛子の調味料をかけた料理。エジプトの街にはあちこちにコシャリ屋があり、安価で腹持ちのいい軽食として親しまれている。
そんなコシャリにも、2010年末から始まった民衆蜂起「アラブの春」後に悪化したエジプト経済の影響が出ているという。現地在住のエジプト・ウォッチャーは「コシャリは、諸物価高騰の影響でコメの割合が減り、通常の注文ではレンズ豆やひよこ豆が入らないコシャリ店も多くなっています」と話している。
コシャリのおいしさは、レンズ豆やひよこ豆など複数の素材が醸し出すバランスだ。豆の入らないコシャリ。エジプト庶民の味にも経済難の余波が押し寄せているというわけだ。
草野さんは「中東料理は発展途上の手前ぐらいのところにある。日本人の中東との関わりは、オイルショックや湾岸戦争、『アラブの春』などネガティブな要素が多かったが、中東には違った面もあることをメディアも伝え始めている。料理を通じて現実とのギャップを知ってほしい」と話している。
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