京成止めた台風塩害、応急処置は「拭き掃除」 6年前に対策開始も…「スピード遅かった」
京成線で10月5日、電線からの出火が相次ぎ、10時間以上にわたって全線で運転を見合わせたトラブル。この原因について、京成電鉄は台風による「塩害」だったことを11月28日に発表した。
この被害は日本に到達した台風24号がもたらしたものだ。同社のドル箱である京成線全線で同日朝9時から運転が休止し、終日の運休で上下1080本、45万2000人に影響を与えることになった。応急対策を講じて翌日始発から全線で運転を再開。部品や損傷設備の取り替えは、発生から遅くとも約2週間で終わっている。しかし、あれから約2カ月。すでに季節は冬の様相だが、その間にもう1つの対策が続けられていた。
付着した塩を手でふき取る
塩害は、最大瞬間風速50mに達する吹き返しの風が、海水を沿岸の広い範囲に運んだことで起きた。京成の例では、海水が送電線などに付着し、交流6600Vの高圧配電線や列車に電力を供給する直流1500Vのき電線などが塩分を介して通電することでショートし、送電線や変圧器などの焼損が同時多発的に発生して変電所をダウンさせた。これが、運転見合わせの原因である。
応急対策は全線を点検したうえでの損傷した部分の取り替えだ。そのうえで最後まで残った作業は、送電設備に付着した「塩」を手で拭き取る清掃。それも「ちょっとした水で洗い流せるものではない。想定以上、かなりの量の塩分」(同社施設部電力課)という地味で忍耐が必要な作業だった。
11月27日から28日の深夜にかけて、ようやく完了した。営業距離152.3km、その間に点在する後述する「ケーブルヘッド」や「高圧ヒューズ」など実に2500か所以上の清掃に作業員数約690人が携わった。
海水が塩害を引き起こす仕組みがわかると、沿岸部を走る線区ではどこでも起きそうだが、今回の台風で京成線より海に近い場所を走るほかの鉄道では、こうした輸送障害は起きなかった。なぜか。
「打つべき手を打ちながらやっていたが、少しスピードが遅かった」
鉄道副本部長の田中亜夫取締役は、今回の輸送障害についてこう振り返った。同社が11月27日に公表した調査結果から、その後悔の念をたどってみた。
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