スポーツ少年が苦しむ「暴言指導」の過酷実態 小6ミニバス少女は退部へと追い込まれた

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同じ地域で別のクラブで子どもが活動しているママ友に相談すると「ミニバスではそんなのは当たり前。子どもが慣れるしかない」と言われた。そのクラブのコーチは子どもを押し倒したり、ビンタや足蹴りをする暴力もあった。その母親はとっさに動画を撮ろうとしたが、ほかのコーチに遮られたという。

「子どもが暴力に慣れてしまうなんて恐ろしいです。時間はかかりましたが、夫と一緒に娘とも話し合って辞めさせることにしました」

涙ながらに語る女性がいちばん苦しかったのは、自分がコーチに暴言をやめてほしいと直訴したことが、少年団をやめるきっかけになったことだという。直訴した夜に「コーチに言ったから、あなたが嫌なことをされるかも」と話したら、娘は「ママに嫌な思いをさせてごめんね」と泣きじゃくったという。

ミニバスケットでは、他クラブへの移籍が禁止されている。ひとつのクラブに戦力が集中するのを避けるためだ。よって、引っ越しなどの事情がないかぎり移籍できない。前述のケースのように環境に問題があっても、バスケット自体をやめるか、子どもが我慢して続けるかの2択しかない。つまり、逃げ場がないのだ。第三者は問題があればやめればいいのにと思いがちだが、女性はこう話す。

「チームメートは同じ地域に住んで同じ学校にいる。子どもが自分だけ辞める選択をするのは本当に大変なんです」

「ミニバスでは当たり前」

母親の発言をあえて伝えたが、実際には怒鳴ったりせず子どもにバスケットを楽しませている指導者もたくさんいるだろう。ただ、関係者に尋ねると、日本バスケット協会が設けている相談窓口に寄せられる案件はミニバス関連が多いという。

たとえば、10月には静岡県浜松市浜北区を活動拠点にするミニバスケットボールクラブで、30代の男性指導者の暴力が発覚。教えたとおりに動けない子どもに対し、ひざの屈伸運動を1000回命じたり、猛暑だった8月に水分補給をさせなかったこともあったという。

ミニバス以外のスポーツクラブでも…

ほかの少年スポーツも深刻だ。大阪府の少年野球クラブは指導者の暴行が常態化。保護者が訴えても一向に改善されなかったため、体罰動画をアップした。それを機に府の少年軟式野球協会と軟式野球連盟は9月、監督を無期限の活動停止処分にしている。

とはいえ、報道されたり表に出てくる暴力はほんの一部だろう。なぜならば、中学や高校の部活動での暴力は学校や教育委員会がコミットするが、それに比べると任意の団体が多い少年スポーツは監視管理の責任を負う体制が整っていない。

この管理体制が整備されていないことは、少年スポーツに暴力的指導がはびこる理由の1つといえる。

理由の2つ目は、指導者の再教育の機会が万全に用意されていないこと。3つ目は、保護者が子どもに過度な期待をかけて活動が過熱するからか、ハラスメントへの意識が根付きにくいことだ。

都内で娘がミニバスケットクラブに所属する30代の父親は「指導者に改めてもらおうと呼びかけても、たたいていないなら暴言くらい許そうとか、ボランティアでお願いしているのだからと親側が遠慮してしまう」と悩みを打ち明ける。

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