飯能駅を「フィンランド化」する西武の本気度

「ムーミン谷」開業へ北欧デザインに改装中

西武鉄道工務部の主任、五味仁美さんは「ムーミンのテーマパークはフィンランドと日本にしかない。そもそもフィンランドと飯能の自然環境が似ているのではないか。そうであれば最寄り駅は本場のデザインにしたい」とリニューアルにかける思いを語る。

自然に必要以上の手を加えず生活に取り入れ、華美でない――フィンランドと飯能が似ている、と聞いて最初は意外だったが「飯能っ子にとって川遊びは基本」とばかりにたくさん川遊びをした筆者の子どもの頃を思い出すと納得がいく気がした。

そもそも市内の「あけぼの子どもの森公園」はトーベ・ヤンソンの名を冠するほど、フィンランドとゆかりが深い。

リニューアルにあたってはフィンランドからコンペの1次審査通過者らを飯能に招き、駅を視察してもらった(画像:西武鉄道)

駅のデザインを手掛けたのは、フィンランド人のデザイナーだ。西武鉄道は2017年度、フィンランド大使館と共催で、同国内のデザイナーを対象にコンペを実施した。実際に同社社員もはるばる現地へ出向き、飯能という街について説明をしたという。

駅のデザインについて国内の有名建築家が腕を振るうことは少なくない。京王電鉄の高尾山口駅や、現在建設中のJR品川新駅(仮称)は、新国立競技場の設計で知られる隈研吾氏がデザイン。西武が来年投入する新型特急車両「Laview(ラビュー)」の基本デザインを監修した妹島(せじま)和世氏はJR日立駅を手掛けている。

デザインは大使館共催のコンペで決定

しかし、今回の飯能駅のように、海外のデザイナーに頼む例は珍しく、西武鉄道がリニューアルにかける思いの強さがうかがえる。

コンペには13社が参加。その中から決定したのは、自然環境と生活とを溶け込ませたデザインだ。

飯能駅改札付近の完成予想図。天井の鳥は利用者を導くように配置するという(画像:西武鉄道)
特急ホームの完成予想図。壁のくぼみに座って休めるようにする(画像:西武鉄道)

完成予想図を見ると、壁や柱、ベンチなどに木材が施され、天井には鳥の群れが飛んでいる。人工的な案内看板はむやみに置かず、天井の鳥のオブジェが示す方向を見れば、自然と人が導かれるように工夫した。

ホームはそれぞれフィンランドの季節がモチーフで、1・2番ホームは「春」、3・4番ホームは「夏」をイメージしている。特急ホームは「冬」で、照明で粉雪を表現する。日本の四季でなく、フィンランド人特有の季節感を表したため、比較的短い「秋」がないそうだ。

工事担当者のひとり、同社工務部の竹田昇平さんも飯能の出身だ。「日頃から駅を利用している人も、地元の良さを再認識してほしい」と話す。幼稚園の頃は、近所の河原がプール代わりだったという。

地元の友人や近所のおばちゃん、商店街の店主らからも「早くできないの?」と駅のリニューアルに期待する声があがるとか。五味さんも「新しくなった駅をきっかけに地元が盛り上がることで、他の地域からも注目されてほしい」と語る。

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