酒に溺れる人が自覚するヤバすぎる思考回路 毎年300万人以上が過度な飲酒で死んでいる
また、冒頭で紹介したWHOの調査結果からもわかるように、酒絡みで発生するトラブルは多い。酒を飲むと判断力が鈍くなるし、頭がボーッとする。時には記憶さえも失う。また、なかには攻撃的になる人もいることがトラブルにつながっているのかもしれない。
アルコール依存症の思考回路
酒絡みのトラブルといえば、最近だと元「モーニング娘。」の吉澤ひとみの事件を思い出す。彼女は今年9月に東京都中野区の道路で飲酒ひき逃げ事故を起こした。幸いなことに被害者2人は軽傷ですんだが、彼女の車は時速80km出ていたという検証結果もあるわけで、彼らが死亡しなかったは不幸中の幸いだ。あれだけの立場の人間の場合、事故を起こしてしまったら、すぐに車を停め、被害者の介助に務めるのが当然だろう。
だが、彼女はその判断力さえ失っていた。報道によると、検査では1リットル当たりの基準値0.15ミリグラムの約4倍に当たる0.58ミリグラムのアルコールが検出されていたという。「缶チューハイを3缶飲んでいた」と供述していたそうなので、飲酒ゆえの失敗と言ってもおかしくないだろう。
酒を大量に飲むと、「すべてがどうでもよくなる」と考えることは案外多い。自分自身も、たとえば酩酊したときには「もう家に帰らなくてもいい」と思ってしまう。そのときに何をするかといえば、「もう歩くのも面倒くさいし、タクシー代ももったいない」と、繁華街の隅っこで酔いが覚めるまで寝てしまう。
それ以外にも酒の失敗は多くある。記憶を失い最終電車で降ろされたら、なぜか埼玉県朝霞市の朝霞駅にいたことがある。有楽町線の新富町駅で飲んでいたはずなのだが、気づいたら朝の3時。駅前の商店街の青いポリバケツの側で倒れていたのだ。カバンも失っており、当然財布も失っていた。極めつけは、泥酔してラジオ番組に出演し、暴言を吐きまくったうえに退場させられた過去もある。
筆者はもう若者ではなく、45歳の立派な大人だ。もはや笑ってすませられるレベルの問題ではないし、今後自分が酒をきっかけに大きなトラブルを起こさない保証もない。「だったらやめるように努力しろ」と、正常な方は言いたくなるかもしれない。だが残念ながら、アルコール依存症の思考回路というのは以下のようなおかしなものなのである。
・せっかく夕方になったんだから飲まなくちゃ
・こんなにおいしい料理があるんだから、それを最大限楽しむためにも飲まなくちゃ
・今日は友人にめでたいことがあったから飲まなくちゃ
・今月は営業成績が良かったから飲まなくちゃ
・今日が天気がいいから飲まなくちゃ
・久々の出張だから行きの新幹線で飲まなくちゃ(もちろん帰りも飲む)
もう、酒を飲むためなら理屈はなんだって構わないのだ。ただし、後ろめたさはあるため、こうして理由付けしようとする。過去に酒がきっかけで、何度もキツい思いをしたのになぜ今も飲むかといえば、「酒のある人生のほうが豊かである」という“邪教の信者”になっているからだ。
一度、アルコール依存症になってしまうと、この邪教からはなかなか抜け出せない。以前、漫画家のまんしゅうきつこさんが『アル中ワンダーランド』という自身のアルコール依存症体験をつづったコミックエッセイを出版するにあたり、彼女とコラムニストの小田嶋隆さんと私で「アル中鼎談」を行った。
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