トランプの「日本潰し」はついに本格化するか 「ねじれ議会」誕生でアジア政策はどうなる

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「民主党員の中には『切り離し戦略』は愚行に近いと主張する議員もいるかもしれない。しかし、トランプ大統領が再選に向けてこの戦略が彼の支持層にウケると考えるのであれば、その代償が自ら抑えられる範囲のものであるかぎり、この戦略を追求するだろう。だが、これはあってはいけないことだ。特に長期化した貿易戦争によるアメリカの消費者と企業両者にとっての負の側面がしだいに明らかになってくるのであれば」

アジア政策に関して、今回の選挙結果の影響を最も受けないのは北朝鮮政策だろう。トランプ大統領による北朝鮮の人権問題と政策に関する対応は、議会でも批判されている。

また、安全保障専門家の多くは、トランプ大統領による金正恩朝鮮労働党委員長との交渉は未熟で、不利な合意に至りかねないと懸念している。こうした専門家は、トランプ大統領と北朝鮮との合意によって、朝鮮半島での長期的なアメリカの存在感が事実上損なわれかねないと案じているのである。

残り2年は「政治的遺産作り」になる可能性も

だが、大多数の人々は北朝鮮に関して政権に異を唱えても効果が薄いと考えている。「トランプ大統領は、この件に関しては自分が有利な立場にいると感じている」と、北朝鮮と長らく交渉した経験をもつアメリカの元高官は話す。「中間選挙による影響はないだろう。誰も大統領にブレーキをかけてはいないから」。

とはいえ、はたしてトランプ大統領は、今後も過去にささやかれたノーベル平和賞を受賞するという幻想を期待しながら金委員長との取引を続けていくのだろうか。ニューヨークで開かれるはずだったマイク・ポンペオ国務長官と北朝鮮当局者とのハイレベル会談を北朝鮮政府が突如キャンセルしたことは、交渉が深刻な障害に直面していることを示している。

北朝鮮側は非核化の領域であまり前進しておらず、もっとくみしやすいトランプ大統領との2度目の首脳会談の開催に関心を向けている。トランプ大統領は記者会見で急ぐ必要はないとの見解を示しながらも、首脳会談は来年初頭にも開催されるだろうとも付け加えた。

「北朝鮮政府はトランプ大統領が『敗北』することを誰よりも恐れています。負かす相手がロバート・モラーであれ、ほかの何であれ」と、トランプ大統領に厳しいことで知られる、ある経験豊富な共和党の外交政策の専門家は中間選挙に先立ってこう語った。なぜならトランプ大統領にとって「中間選挙の結果が悪ければ、彼は政治的遺産作りにより専念する」ことが見込まれるからだ。

少なくともこれから2年間、世界はトランプ大統領が政治的遺産作りに勤しむのに対して、これに対処する手段を講じていかなければならない。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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