新型新幹線N700S、「8両化」に隠された狙い 7両編成のドクターイエローを造る可能性も

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台湾新幹線「700T」は700系をベースに開発された(記者撮影)

特に台湾で高速鉄道を運営する台湾高速鉄路は2016年の延伸後、車両数が不足気味だ。当初は4編成の製造オプション契約を持つ川崎重工業に発注するとみられていたが、キャンセルとなってしまった。その理由はいくつかあるが、中には700系をベースに開発した台湾新幹線「700T」の価格が、開発費用が含まれている分だけ700系に比べて割高だったこともある。

その後、国際入札による調達に方針が変わり、現在は諸条件を詰めている段階だ。台湾高鉄の担当者は「現在、当社として公表できるものは何もない」と述べるにとどまるが、現地報道によると2024年までに8編成、その後に4編成の計12編成を調達するという案が検討されているもようだ。

現在、台湾を走る高速鉄道車両はすべて日本製だけに、日本としては新たな車両も絶対にものにしたい。700系と違い12両化への基本設計が不要なN700Sはその分だけコスト面での不安要素が減ったことになる。

工場内の移動が容易に?

N700Sの特徴はほかにも数多くある。この日公開されたのは列車に搭載された小型・大容量のリチウムイオン電池。地震発生などによる長時間の停電時に、バッテリー駆動でトンネルや橋梁から自力で脱出できるシステムを高速列車では世界で初めて搭載した。「駅から駅へ移動するのは無理だが、トンネルを抜け出して近くの安全な場所まで移動するくらいの距離は走れる」とJR東海の技術開発担当者は説明する。

N700Sに搭載されたリチウムイオン電池(撮影:尾形文繁)

また、このシステムを車両の検査や整備作業時に活用することも検討中。パンタグラフから電気を取り入れたり、作業用車両に牽引されたりすることなく、自力で工場内を移動できるのであれば、作業の効率化にも貢献するだろう。

「バッテリー自走システムを搭載できるようになったのは、床下機器を小型化したことで新技術を搭載するスペースができたためだ」と、JR東海の担当者は明かす。また、「中間車両の種類が減ったことで量産時のコスト低減も期待できる」という。これらを総合して考えると、短い編成が可能になったことよりも、新技術の搭載や量産効果、作業の効率化といった点においてJR東海自身のメリットは大きそうだ。

外観こそ現在のN700系とさほど変わらないが、数多くの特徴を備えたN700S。はたして海外でその勇姿を見ることはできるだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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