楽天と西友「ネットスーパー」への期待と不安 関東中心に展開、取り扱いは最大2万品目に

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セブン&アイ・ホールディングスは傘下のGMS・イトーヨーカドーの約140店(2018年2月末、全164店舗)でネットスーパーを手掛けるが、同事業の売上高は2017年度に442億円と前年度比で1.2%減、イトーヨーカドーの売り上げ全体の3.6%でしかない。大手スーパーのサミットは、採算性が低いことからすでにネットスーパー事業から撤退した。

便数やリードタイムは変わらない

いち早く参入した西友でも、ネットスーパー対応店は全体の4割程度にとどまる。売上高は未公表で、「2ケタの伸び率を継続している」(西友の竹田執行役員)と強調するが、「業界で1位ではない」(同)という。

西友の竹田珠恵執行役員(左)と楽天の小森紀昭執行役員は今回の共同事業に自信を示す(撮影:梅谷秀司)

経済産業省の調査によると、国内における食品のEC市場は2017年に1兆5579億円と、EC全体の2.4%にすぎない。「生鮮品は日持ちがしないので、在庫管理や物流システムの高度化は欠かせない。逆に言うとそれができなければ、市場拡大のネックになる可能性がある」(富士経済の栗田氏)。

今回の楽天と西友も物流網を拡張し、1回当たりの配送量は増加する。だが、配送便数は1日6便、注文から届け出までのリードタイムは最短4時間と、従来から変わらない。顧客は15時までに注文しないと、商品が当日中には届かない。

今後は楽天の独自配送システム「楽天エクスプレス」などと連携し、スピーディできめ細やかな配送サービスが打ち出せるかどうかが問われる。楽天と西友の思惑通りに事業が進捗するか。勝負は始まったばかりだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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