イタリア予算案、EUの財政規律を大幅に逸脱 欧州委員会が書簡で通達、「前例のない」違反
[ブリュッセル 18日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は18日、イタリア政府に対し2019年予算案はEU財政規律から大幅に逸脱しているとの見解を通達し、「前例のない」違反だと指摘した。イタリアのコンテ首相は欧州委の見解について、予算案はEUの財政規律から「それほど大きく」逸脱していないとの見方を示し、予算案を擁護した。
こうした書簡の送付は欧州委がイタリアの予算案を却下する準備段階となり、制裁金につながる可能性もある。
欧州委はイタリアのトリア経済・財務相宛ての書簡をウエブサイトに掲載。それによると、欧州委は予算案について、政府支出の規模が大き過ぎ、一時要因などを除く構造的な赤字が増加するほか、公的債務水準はEUの財政規律に沿って減少しないとの見解を表明。
「これらの3つの要素は、(EUの財政協定である)安定・成長協定に盛り込まれている予算政策の義務の深刻な違反につながる可能性があることを示している」とした。
また、19年予算案では純歳出の名目の増加率は2.7%となることが示されているが、EU財政規律の下でイタリアに許容されている伸びは0.1%にとどまると指摘。構造的な赤字の対国内総生産(GDP)比率は19年は0.8%上昇すると見られるが、EU財務相が7月に示した拘束力のある助言によると、イタリアは同比率を0.6%低下させる必要があるとした。
その上で、予算案は目標からの逸脱が「前例のない」大きさであり、「特に深刻な違反」のようだと指摘。10月22日までに回答するよう求めた。
EU当局者は、さらなる措置を講じる前にイタリアの説明と予算案の是正を求めていると強調。モスコビシ欧州委員(経済・財務・税制担当)はトリア経済相に書簡を渡した後にローマで開いた記者会見で「時間はある」と述べた。
コンテ首相は欧州委の指摘に対して説明を行う用意があるとしたが、書簡を受け取ったことは懸念していないと言明。目標からの逸脱は大きくないとし、スペインやフランス、ポルトガルにも同様の書簡が送られるとの見方を示した。
だがEU当局者はロイターに対し、「イタリアの事例はかけ離れている」と述べ、他国への書簡は財政リスクを警告するものにとどまっていると明らかにした。
イタリアが内容を修正しなければ、欧州委は10月29日までに予算案を却下する可能性がある。そうなれば前例のない事態となり、金融市場に一段の混乱が広がる恐れがある。
18日のユーロ圏金融・債券市場では、イタリアとドイツの10年債利回り格差が5年半ぶりの大きさに広がった。
コンテ首相は、政府が主要格付け機関と協議を進めていることも明らかにし、予算案がマイナスの評価を受けないことを期待していると述べた。格付け機関のムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は向こう2週間以内にイタリアの財政状態の見直しを実施する。
予算案を巡っては、イタリア国内でも、歳入措置として盛り込まれた税金の一部恩赦について連立政権内に対立があるとの見方が浮上しており、コンテ首相は20日に政権内で協議を行う意向を明らかにした。
*内容を追加しました。
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