マツダが全車種を頻繁に大幅改良できる理由 そこに「一括企画」と「モノづくり革新」がある
こうすることにより、新車登場から数年を経た車種でも魅力が衰えることなく、かえって商品性が高まっていくことになり、欧州車のようにモデル末期が最も買い得なクルマとなっていく。それにより、販売店は安定性のある持続的な売り上げを確保することが可能になる。
そうすると販売台数を追う無理な値下げキャンペーンを行う必要がなくなり、適正価格での販売を行えることになり、残存価格の高値維持ができることによって、実は消費者にとっても下取り価格が高かったり、残価設定ローンの残存価格を高くできたりすることにより、月々の支払額を抑えられるなどの得も生まれる。
かつて、「マツダ地獄」と言われ、マツダ車を一度買ったら以後マツダ車に乗り換えなければ下取り価格が折り合わないといったことがなくなった。
「一括企画」と「モノづくり革新」
では、マツダはなぜそのようなクルマづくりや販売方法ができるようになったのか?
マツダは、SKYACTIV技術を織り込んだ新世代商品群を、2012年の「CX‐5」から発売するに際し、2つの大きな取り組みを行っている。1つは「一括企画」による車両開発であり、もう1つは工場における「モノづくり革新」である。
一括企画とは、新車の商品企画を練る際、1台1台の内容を詰めることはもちろんだが、その際に進行している新技術の実用化を並行してとらえ、その新車が発売される際にどの技術が間に合うのか、また間に合わない場合には何年後に実用化が達成されるのかを併せて検討する。
そして新車発売時期に間に合わない技術であっても、そのモデル期間中に実用化されるのであれば、追加の新技術を途中で織り込めるように新車開発を進めるのである。こうすることで、その車種が販売される期間はずっと最新の技術や装備を更新していくことができることになる。それが、商品改良や商品の大幅改良を可能にしている。
もう1つは、工場の生産におけるモノづくり革新である。工場の生産ラインでは、多品種の生産を1つのラインで兼用できることが、効率化の1つとなっている。それは、どの自動車メーカーでも取り組んでいることであり、そのこと自体に珍しさはない。
しかし、マツダの年間生産台数は180万台規模であり、1000万台規模にのせるトヨタなどに比べると1/5の生産規模でしかない。そうしたなか、多品種の生産を1つのラインで行うため、専用の工作機械を使ったのでは、工作機械を作るための投資が必要になる。
また、ラインを流れるクルマが販売動向によって変更された際には、改めて別の工作機械を投入しなければならなくなる可能性もある。それでも、年間生産台数が膨大な自動車メーカーであれば、そこも見越した投資計画ができるはずだが、マツダはそれほど頻繁に工作機械を入れ替えられない。
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