石破善戦?いや党員票をもっと取れたはずだ 勝つことができたはずの地域で「とりこぼし」

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安倍首相と近い日本維新の会と自民党府連が鋭く対立している大阪府は、石破氏が勝つチャンスが大きい地とみられていた。地縁がないとはいえ石破氏は、2月5日に大阪市内で1000人以上を集めた大規模セミナーを開催している。

また「安倍カラーの薄い地域」として滋賀県も重視した。2014年7月の滋賀県知事選で石破氏は幹事長として采配をふるい、3度滋賀入りしている。また総裁選を念頭に、何度も滋賀入りした。3月までに5度滋賀で演説し、各回300人以上動員した。「石破後援会」が結成されたところもある。

にもかかわらず、大阪では1万1813票を獲得した安倍首相に対し、石破氏はその3分の2程度の7620票。滋賀県でも4056票の安倍首相に対して石破氏は2991票で、やはり3分の2だった。勝てる可能性の高い場所で勝てていないのだ。

これらの敗因として、まずは石破氏の政策のわかりにくさが挙げられる。確かに石破氏は農政の重視を訴えているのだが、その具体策が見えてこない。頭脳明晰で知識も豊かだが、理屈ばかり先走っている印象が強い。出馬宣言以降、石破氏が数回開いた政策発表会でも、「夢」や「将来の展望」が見えず、まるで講義を受けているようだった。その上、「華」に欠けていた。

進次郎がもっと早く支持表明をしていれば…

その「華」の役割を石破氏は小泉進次郎筆頭副幹事長に期待したはずだ。小泉氏には石破氏にない「短くわかりやすく伝える」能力がある。石破氏は小泉氏に何度も協力を要請したが、小泉氏は投票の直前まで誰に投票するかを明らかにしなかった。石破支持を周辺にもらしたのは、19日の党員票を締め切った後だった。これは安倍陣営から小泉氏に圧力がかかったゆえだと報道されている。

小泉氏がもっと前に石破支持を明らかにしていたら、総裁選はおおいに盛り上がったに違いない。自民党総裁選は単なる政党の代表を選ぶ選挙ではなく、事実上の総理大臣を選ぶ選挙。小泉氏には自民党所属議員として、2人の論争を盛り上げる責任の一端がある。

そもそも投票日前日に石破支持を表明するのは中途半端だ。党員票は動かせなくても、議員票を動かせる可能性があるからだ。影響を与えたくなかったのであれば、小泉氏は投票後まで明かすべきではなかったし、いっそ投票後にも一切沈黙を守った方が筋が通った。「二者択一ではない」や「違いがあっていい」などと、なんとなくほのめかしていたのも、いかにも中途半端にみえた。将来の首相候補として、常に注目を集めてきたが、今回の態度表明の有り様は、1つの汚点といえるだろう。

すでに永田町では内閣改造や党の新人事が話題の中心になっている。石破氏側を排除する動きがあるとの報道も散見し、穏やかではない。ウラジーミル・プーチン大統領の「前提条件なき平和条約締結提案」や南北首脳会談、そして日米首脳会談など、国際的にも重い課題を抱えながら、総裁3期目に突入した安倍首相は秋の政局をどう乗り切るつもりなのだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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