石破善戦?いや党員票をもっと取れたはずだ 勝つことができたはずの地域で「とりこぼし」

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ただ石破陣営はそれまでの戦いで手ごたえを感じていたようで、石破陣営の議員はこの時、「(自粛分の)あと3日あれば違っていた」と述べている。この言葉は「論戦を通じて自陣営に勢いが出ており、もう少し時間があれば流れを変えることもできた」という意味だと筆者は受け止めた。

「とりこぼし」が目立つ

結果的に、石破氏は73票の議員票、181票の党員算定票を獲得した。事前の議員の態度表明などを元にした票読みでは「石破氏の議員票は50票」と報じられていたが、そこから20票余りを上積みしたことになる。さらには、石破氏に投じられた党員算定票は全体の44.6%を占めた。

(表:共同通信)

この結果を各メディアはほぼ一斉に「石破氏の善戦」と報じている。確かに石破陣営はよく戦ったが、果たして「善戦」と言えるほどのものだろうか。というのも、ひとつひとつを見る限り、「とりこぼし」が目立つのだ。

そもそも安倍陣営は「議員票の8割、党員票の6割」を目標にしていた。405票の議員票と同数の党員算定票で換算すれば、安倍首相は議員票の81%と党員算定票の55.4%を制している。党員算定票は目標に達しなかったが、それでも石破氏が「善戦した」ということにならない。

石破氏が党員票で期待したのは、北海道、東北地方の各県、さらには近畿地方の大阪府、滋賀県などだった。

北海道や東北地方など農業のさかんな地域では、安倍政権が推進したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に抵抗感が強い。実際に2016年の参議院選では青森、岩手、山形、宮城、福島という1人区で自民党は敗北している。地方重視、農政重視の石破氏にはチャンスの地域だったはずだ。

ところが、北海道、東北地方の各県のうち、石破氏の票数が安倍首相を上回ったのは、支持を表明した加藤鮎子衆議院議員がいる山形県のみだった。

そして大阪府、滋賀県でも勝つことができなかった。

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