東欧鉄道メーカー苦戦に忍び寄る「中国の影」 製品は好評だが経営基盤脆弱で買収の標的に

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苦境に陥ったペサに対し、救いの手を差し伸べたポーランド国内銀行6社は、借金の返済が可能な投資家を見つけることを条件に、20億ズウォティ(約592億7000万円)の融資に合意した。

これは、少なくとも同社が製造中だったポーランド国内向けトラムや電車の製造に必要とされた金額で、資金調達後にまず受注済みの車両製造に着手した。受注済み車両を各鉄道へ速やかに納入しないかぎり収益は得られず、このままでは新たな受注はおろか返済もままならない。

イタリア市場を開拓

厳しい状況が続くペサだが、近年は自国ポーランドや周辺の中・東欧地域、ロシアなどに加え、前述のドイツ鉄道向け大型契約など西欧諸国でも同社製品の導入が増えていた。

ペサ社の低床式近郊用気動車Atribo。主にイタリアへ納入されているほか、少数がポーランドへ導入された。写真は伊エミーリャ・ロマーナ鉄道(FER)向け(筆者撮影)

とりわけイタリアは、同社にとって主要な市場の1つと言える。同国で同社製の車両を最初に導入したのは地方の私鉄だったが、この際のディーゼルカーの評判がよかったこともあって、全土で列車を運行するナショナルカンパニーであるトレニタリア(Trenitalia)社がペサ製車両の導入契約を交わしたのだ。

まず2013年12月に、3両編成40本の地方ローカル線用車両を契約、20編成分の追加オプションがあったが、今年8月にオプションのうち14編成分を追加発注することを決定、正式に契約したと発表された。

イタリアと言えば、現在は仏アルストムに買収された旧フィアットの鉄道車両製造部門や、日立に買収された旧アンサルドブレダのおひざ元で、同国では長年の間、これらをはじめ国内に拠点を持つメーカー製の車両が導入されてきた。

2005年から700両以上の電気機関車をトレニタリアに納入したボンバルディアも、これらの機関車を実際に製造したのはイタリアのヴァド・リグーレ工場だった。同工場は歴史をさかのぼれば1871年創業の老舗イタリア企業、テクノマシオ・イタリアーノを前身としており、実質的にはイタリアの企業が製造したと言える。

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