気仙沼住民を泣かす“高すぎる”防潮堤計画 巨大な防潮堤が町づくりの足かせに
防潮堤が前提の町づくり
それから1年2カ月。今年9月3日の住民との対話集会で、村井嘉浩(よしひろ)・宮城県知事が「高さは絶対に変えない」という従来の頑とした姿勢について「誤解を招いた」と釈明。「(防潮堤の)基準は変えないが、高さが多少変わってくることは十分考えられる」と述べるに至って、膠着状態に変化の兆しが現れた。
10月28日には当初の計画に加えて防潮堤の高さを下げたシミュレーションなど三つの案が「内湾地区復興まちづくり協議会」主催の会合で住民に向けて説明された。
このシミュレーション作りに関与した協議会の菅原昭彦会長は「県と市、そして住民のうち誰と誰の意見が一致すれば、合意形成にこぎ着けたと判断できるのかは、はっきりしない。ただ、防潮堤が決まらないと、町づくりも進まない」と語る一方、11月いっぱいで合意を目指す計画は「簡単ではない」と明かす。
10月28日の集会で配付されたA3版カラー刷り資料では、20ページににわたって3案が示されたが、「内容は専門家が見ても理解が難しい」(東泰規・内湾地区復興まちづくり協議会コーディネーター、E.A.S.T.建築都市計画事務所代表取締役)。
その概要は、内湾入り口部分の岬に「湾口防波堤」を別に建設することや、「余裕高」として設定されていた1メートル分を省くことで、防潮堤の高さを下げられるというもの。ただし、防潮堤でも防げない東日本大震災級の巨大津波(=レベル2)が押し寄せた場合、市街地の浸水域が大幅に広がるというシミュレーション結果も明らかにされた。
防潮堤の高さを下げたシミュレーションに基づくと、内湾地区の大部分が「災害危険区域」(=浸水区域)に指定されるという問題が新たに浮上したのだ。そうなると現行法では、厳しい建築制限が導入され、建物の1階部分での居住が困難になる。防潮堤を低くすることが、町づくりに深刻な影響を及ぼす。
防潮堤の計画は、リアス式海岸の入り江が点在する地域の暮らしにも深刻な影響を及ぼしている。
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