「R32GT-R」が今なお200万円以上で売れる理由

伝説のクルマはいかにして生み出されたか

グループA規定は、非常に厳しい制約があった。たとえば、レースに出場するためには、年間生産台数が5000台以上の量産車であることが条件となっていた。幅広いレーシングタイヤを装着するためあとから追加されるオーバーフェンダーやリアスポイラーなど、量産車の外観を崩す外装の取り付けは禁止。それに合わせ装着できるタイヤ寸法は、エンジン排気量に応じて限度が定められていた。

グループAが目指したのは、庶民に近い存在である市販ツーリングカーのレースにおいて、エンジン性能や外観が量産車から著しく進化しすぎることを抑えることにあった。そしてより多くの参加台数をそろえ、熱のこもった競争が展開されることが期待されたのである。

それでも、欧州の自動車メーカーを中心に、特注車両ともいうべき高性能車が市販されるようになり、すでに市販されているクルマにグループA規定をそのまま適用してもなかなか勝てない状況が生じた。

日産も、R30やR31スカイラインにRSやGTS‐Rといった高性能仕様を追加し、性能強化を行いはしたが、たとえばBMW「M3」や、フォード「シエラRS500」といった車種に先を越される情勢だった。そこでなんとしても勝つために、GT‐R復活が決定されたのである。

競合他車を周回遅れにする速さ

R32GT‐Rの2600cc(正確には2568cc)という一見半端に見えるエンジン排気量も、グループA規定の中でターボチャージャーによる過給に対する排気量換算係数を加味しても、最低車両重量で有利に立つための選択だった。アテーサE‐TSという電子制御による4輪駆動も、車体外板の内に収まるグループA規定に従った細身のタイヤ寸法で、500~600馬力のレース仕様エンジンの出力を速さに生かせるグリップを確保するためである。

RB26DETTの型式で、R32GT-Rに搭載されていたエンジン。2568ccという中途半端な排気量にも意味があった(写真:日産自動車ニュースルーム)

また、GT‐Rには、R32スカイラインの基準車よりやや幅広いフェンダーが当初より採用され、それはグループA規定内最大のタイヤ幅を覆うためであった。さらにトランクリッド上には、GT‐R専用の大きなリアスポイラーが装備された。

こうして登場したR32スカイラインGT‐Rは、国内ツーリングカー選手権開幕戦で競合他車を周回遅れにする速さを見せ、圧倒的な勝利を収めたのである。また海外においても、スパ・フランコルシャン24時間レースなどにおいて、総合優勝を勝ち獲っている。国内のグループA選手権では初戦での勝利以来29連勝を記録し、GT‐R復活の目標は見事に達せられた。

R32GT‐Rは、総生産台数4万4000台近くという歴代GT‐Rで最大の数を誇った。ハコスカGT‐Rが2000台強の総生産台数であったから、とてつもない数である。

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