日本の株価が大きく上昇すると読む理由 株価をPERだけで見る人はつねに間違える

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また製造業だけでなく、サービス分野でも日本企業はこれから高い成長が期待できます。ホスピタリティーの高さ、治安の良さ、などオンリーワンの高品質が、グローバルな消費者から高い評価を得ているのです。かつては、「東京→箱根→富士山→京都→大阪」がゴールデンルートと呼ばれ、インバウンド観光客の大半はこのルートで観光しましたが、今はこのルートから大きく外れた地方にまで、外国人観光客が訪れています。

外国人が日本の内需産業を支えているということからもわかるように、まさに今、グローバルな消費者の手によって、日本が持っている価値の掘り起こしが進められているのです。これらを足し合わせると、日本企業が将来、生み出すと思われるキャッシュフローは、さらに加速度的に増えていくでしょう。今のような、極めて割安な水準に株価が放置されている理由は、まったくないのです。

これから「本格的な株価革命」が起こる

日本企業は製造分野においてオンリーワンの存在を確立し、過去最高益を更新しています。加えて日本が持つ魅力が評価され、インバウンド観光客が大挙して訪れている。繰り返しますが、これらの点を考えると、日本企業が将来においても、非常に潤沢なキャッシュフローを持っているというのは、想像に難くありません。

一部には「財政赤字が膨張し、日本の金利が大幅に上昇する」と懸念する声もあります。しかし、世界最大の貯蓄余剰を持っている日本ではそう簡単に金利は上昇しませんし、仮に長期金利が上昇したとしても2%、3%程度がせいぜいでしょう。そのもとで上述の潤沢なキャッシュフローが得られるとなれば、株価がこれ以上に落ち込むことなど考えられません。

それどころか、前述したように株式益回りが将来、大きく低下するなかで、とてつもない株価革命が起こる可能性が高いと考えられます。過去、日本の株価バリュエーションは、10~15年ごとに革命的ともいえる水準訂正を繰り返してきました。1972年から1985年まで、株価は大きく上昇し、株式益回りは社債利回りの半分くらいまで低下しました。それと逆に、PERは1971年までの10倍程度から、この間に20倍まで上昇しました。

1985年から1990年にかけて株価がさらに上げ足を速め、株式益回りは社債利回りの3分の1以下まで低下し、PERは50倍という水準まで高まりました。

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その後、株価はバブル崩壊によって急落、株価だけでなく企業業績も悪化したため、株式益回りはほぼ変わらないのに、社債利回りが大きく下がったため、株式益回りと社債利回りがほぼ同じ水準になりました。そして現在、企業業績が過去最高益を更新する一方、株価は相変わらず低迷しているため、株式益回りは大きく上昇し、社債利回りを大きく上回っています。

これらを根拠にして、日本の株価はすでに劇的な上昇過程に入っている可能性が高いと考えられます。もちろん、資本市場改革など諸々の政策支援も必要ですが、それらが合致すれば、「日経平均株価の10万円到達」は、決して絵空事ではないのです。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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