48歳、不倫され別れた女をなお愛す男の境地

結婚11年で離婚、激しすぎる暴力を受けても

結婚した当初から、育美にはDVの片鱗があった。仕事が終わって、正弘さんがくつろいでいると、背中に突然“かかと落とし”を食らわせられたのだった。

「仰天してひっくり返っていると、妻はうれしそうに、『かかと落とし決まったー!』って喜んでいましたね。私は何が起こったのかわからずに、ただただ激痛のせいで、声も出せずにうずくまっていました。後で知ったんですが、妻は、僕のような身近な人間に暴力を振るって、ストレスを発散するタイプだったんです。とにかくストレスが溜まってくると、何かと手や足が出ていたような気がしますね」

一緒に住み始めてしばらくすると、年の離れた正弘さんのことを「おい、オヤジ!」と呼び捨て、「稼ぎが少ないんだよ!」などと、何かにつけて正弘さんを罵倒するようになった。

正弘さんは、そんな育美の態度を真に受けて腹を立てるというよりも、まるで腫物に触るかのような感じで軽くかわす日々が続いた。当時の職場では、今でいうところのブラック企業で、サービス残業がかなり多く、休日もまともに取れなかったため、家庭のことは正直なおざりになっていた。

妻の不倫が発覚

そのうちに育美は、子どもができないことに悩み始め、不妊治療に没頭するようになる。排卵日に合わせて半ば強制される、機械的な性行為の繰り返しに、正弘さんは正直傷ついていた。

「不妊治療は精神的にきつかったですね。やっぱり愛がないと、行為の最中空しくて気持ち良くなれないですね。子どもを作るためだけって本当に苦痛で、悲しくて仕方がなかったですね。それでも、自分は頑張ったと思いますよ」

その成果が実ったのか、育美は第1子を身ごもった。

結婚生活の当初から、育美が実の両親との同居を望むようになったこともあり、新たに二世帯住宅を建てることになった。いわば、マスオさん状態だ。

「義理の両親と同居するのは、特に嫌ではありませんでした。同居といったって、どのみち自分は働いて家に帰ってくるくらいだし、妻がお義父さんとお義母さんと一緒に暮らして楽になるなら、それでいいかなと思っていましたね。家を建てるのも、それでみんなが丸く収まるならと思って、特に意見もしませんでした。ローンは全額私持ちでしたが、家族みんながそれで幸せになるなら良いと思っていたんです」

育美は結婚後、正弘さんと同じ勤め先の派遣先の社員を辞めて、自宅からさらに近い介護施設でヘルパーとしてしばらく働いていた。しかし、途中で看護師を目指すことを思い立ち、看護学校へ通い始めることになる。待望の息子も気がつけば小学生。正弘さんは、平凡ながら順風満帆な幸せを手に入れつつあった。

新築の二世帯住宅での生活も満足のいくもので、正弘さんなりに育美の両親を気遣いながらうまくやっているつもりだった。しかし、そんな日々も長くは続かなかった……。

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