ふるさと納税「争奪戦」が終わらない深い事情

総務省が12市町を名指し注意、従わぬ理由は?

嘉悦大学の和泉教授は「泉佐野市は財政健全化団体の指定を脱したが、まだ土地開発公社がらみの将来負担額は大きい」と指摘する。ほかの財源の手当ては簡単ではなく、泉佐野市にとって、ふるさと納税の縮小は死活問題になりかねない。

サーティワンアイスクリームやリンガーハットの商品券が返礼品としてもらえる静岡県小山町。2017年度は前年比49.7%増の27.4億円の寄付を集めた。

これらの商品券での返礼割合は4割に及ぶ。ただ、それ以上に問題なのが「総務省がサーティワンやリンガーハットの商品を地場産品として認識しているかわからない」(担当者)ことだ。富士山麓の水が豊富に得られる環境を生かして、小山町には両社の生産工場があり、多くの町民もそこで働く。町内産業を活性化するためこうした返礼品を送るが、それがルール違反に当たるのか、総務省と意思の疎通ができていないのが現状だ。

世田谷区では40億円を超える住民税が消滅

総務省の担当者は今回の12自治体の公表について、「ほとんどの自治体はルールの範囲内でやっているが、一部の自治体が迷惑をかけている。この危機的状況を何とかしたいと思い、今回公表に踏み切った」と話す。ここでいう「迷惑」とは、制度の爆発的な拡大に伴い、都市部の自治体で本来得られるはずの住民税の流出が年を追うごとに大きくなっていることだ。

世田谷区や杉並区が区民への呼びかけに作ったポスター。住民税の流出に危機感を抱いている(記者撮影)

東京都世田谷区や神奈川県川崎市では昨年度、40億円を超える住民税が“消滅”した。世田谷区の保坂展人区長は「地方創生、雇用創出には賛成。地方が疲弊して東京だけが繁栄を続けられるということはありえない」と制度の趣旨に理解を示しながら、「寄付と言いながら、地方の中でも返礼品によって受け入れ額に大きな格差がついている。高額納税者ほどメリットが出る逆進性も問題だ」と指摘する。

7月17日には23区の区長で作る特別区区長会が野田聖子総務相に対し、税控除の上限額設定や地方交付税による補填の仕組みの見直しを盛り込んだ要望書を提出した。寄付に伴う住民税控除額の上限が2015年に引き上げられたことでふるさと納税が飛躍的に拡大した面があるため、それを元に戻すことを要望している。

都市部の自治体には、返礼品競争を「自粛」しているという思いもある。「もし世田谷区でも物品カタログみたいなことをやったら、本当に過疎で悩む村からも、その村に入るべき税をいただいてしまうことになる。それは泥仕合だ」(保坂区長)。

納める住民税を、お世話になったふるさとや応援したい自治体に移転するふるさと納税。簡単な手続きで寄付ができ、認知度が飛躍的に高まった反面、矛盾もあらわになっている。もう一度、制度のあり方を検討すべき時かもしれない。

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