日本の牙城「台湾鉄道」で韓国新車落札の真相 実は日本メーカーは「不戦敗」だった
とはいえ、政治的見地により中国から車両を導入することは、よほどのことがないかぎりありえない。しかも、近年になって韓国製車両には不具合が頻発した。つまり、日本の鉄道車両メーカーにとって最大のライバルとも言える中韓勢が事実上参入できないという、わが国に極めて有利な状況になりつつあったのが台鉄案件なのである。
台湾各都市のMRT(都市鉄道)やLRTには、欧州系メーカーや地場の台湾車両で製造されたものも多くあるが、台鉄だけを見ると、2005年以降は基本的に日本製の車両が導入されてきた。2002年に設立された台湾車両には日本車輌製造と住友商事が出資するなど日本との関係も深く、日本車輌製造が受注した台鉄の通勤型車両の大半が台湾車両でのノックダウン生産となっているのも特筆される。
そんな中で、現代ロテムは520両という大量の受注を獲得するに至った。いったい、裏で何が起きたのか。関係者への聞き取りの結果、その答えが明らかになった。
入札したのが現代ロテムだけだった
当初は政治的な圧力が働いたのではないか、韓国車ありきで話が進んだのではないか……などさまざまな憶測が飛び交ったが、実態は単純明快であった。すなわち、最終的に入札に参加したのは現代ロテム1社のみだったというのだ。もちろん、台湾側は日系メーカーに対しても応札の打診を行ったが、いずれも規格や価格の折り合いが付かない、国内向け生産で忙しいなどの理由により、入札に至らなかったという。
今回の車両導入は、主に老朽した客車列車の置き換え用として計画されており、今後さらに特急型電車などの導入も予定されている。その中で通勤型車両に振り分けられる金額が限られていたという見方もできよう。だが、これはODA案件に見られるような安価な受注争いではない。
現代ロテムの発表によれば、今回の受注額は1兆ウォン(約1000億円)で、1両あたりの金額に換算すると1億9000万円と決して安い金額ではない。たとえば、日本車輌製造が2011年に受注したEMU800型通勤電車は296両で約440億円、ざっと1両あたり1億5000万円ほどである。
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