米中貿易戦争で中国はまた強くなってしまう 中国人はトランプより賢く、忍耐強い

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これは、中国の多くの民間企業や国営企業がシリコンバレーからの適切な技術革新に対する姿勢を変えたことを意味するものではない。しかし、アメリカが中国を阻止しようとすればするほど、中国人は自分たちの解決策を生み出す可能性が高くなる。

別の例を挙げよう。昨年、対アメリカの外国投資委員会は、中国の自動車用デジタル地図提供会社、Navinfo(ナビンフォ)によるアムステルダムの地図製作会社、ヒアの買収を承認しなかった(同社にはアメリカの半導体大手インテルが15%出資している)。

そこで、『フォーブス』が世界の革新的成長企業トップ100にランクインするナビンフォは、買収を取りやめると同時に、ヒアや、同社を所有するドイツの自動車会社のパートナーであるBMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンとの協業を拡大した。

長く熾烈な戦いを覚悟しなければならない

確かに、中国は自動車市場や、冷蔵庫や洗濯機などの市場でリーダーシップを発揮しているかもしれないが、人工知能(AI)のような分野ではまだ遅れている。しかし、曽氏は、「重要なのは規模ではなく、イノベーション体験と未来がどこに向かっているのかを私たちが理解していること」だと示唆している。

この深い理解および長い戦いを受け入れることが、最終的にどんな貿易戦争においても中国を勝者にすることができる。

中国人、特に政府首脳陣は、強く、発達した自意識を持っている。外界からの圧力に耐える彼らの能力は、毛沢東および、第二次世界大戦後、中国人に力をもたらした共産主義革命にまでさかのぼるだけでは十分ではない。皇帝となる正当性を、人々を支配するのに十分な徳を持っているかどうか天からの啓示によって見極めていた、紀元前千年の周王朝を振り返ってみることがより有益だ。このような進化した運命感と自尊心を持つ人々は、トランプ大統領のような世俗的なリーダーを大きな障害として見ることはまずない。

中国では、面子(メンツ)を失うことは究極的な失敗だ。最善かつ長く続く貿易協定は、少なくともウィンウィンとして解釈されなければならないが、トランプ大統領は今、中国の首脳を彼の「アメリカ第一主義」コーナーに深く追い詰めていて、面子を失うことなく中国人が政治を行う余地はほとんどない。

トランプ大統領は長く熾烈な対立を覚悟しなければならない。しかし、彼は説得されてあきらめるということはない。トランプ大統領の貿易「聖戦」のための費用の準備をしなければならないのは、すべてのアメリカ人である。

著者のデビッド・アンデルマン氏は、ニューヨーク・タイムズやCBSの元海外特派員。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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