JR東が総力戦で挑む「超高速」新幹線の勝算 世界は再びスピード追求の時代に突入する?

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JR東日本が東北新幹線で運行しているE5系「はやぶさ」。新幹線としては国内最速の時速320kmを誇る(撮影:尾形文繁)

この問題点はJR東日本も国土交通省も承知している。そこで、JR東日本は2013~2014年に盛岡―新青森間で時速320km走行を念頭に置いた走行試験を深夜の時間帯に実施し、同区間を高速走行した際の課題の洗い出しを行っている。

国交省も盛岡―新青森間の速度向上について議論をスタートさせた。設備改良により、盛岡―新青森間の時速320~360kmでの運転が実現すれば、同様に最高速度を時速260kmに抑えられている新函館北斗―札幌間の最高速度引き上げが検討される可能性は十分ありうる。

上野―大宮間についても動きがあった。今年5月、JR東日本は埼玉県内における同区間の最高速度を現行の時速110kmから130kmへ引き上げるため、騒音対策として吸音板設置や防音壁かさ上げなど地上設備の工事を行うと発表した。工事は2年程度で完了し、その後は所要時間が1分程度短縮されるという。スピードアップ効果は限定的だが、上野―大宮間は北陸、上越新幹線も走る最混雑区間である。「スピードアップにより運行本数の増加の余地が生まれる」と深澤祐二社長は期待する。

世界は再びスピード競争に?

世界の高速鉄道車両業界はスピード追求から省エネなど効率重視の方向へ傾いている。しかし、世界の高速鉄道の歴史はスピード重視と効率重視の間で揺れ動き、将来またスピード追求の時代がやってくるという見方もある。

実際、独シーメンスは時速300km走行時の省エネ性能を30%改善した最高時速360kmの高速鉄道車両を開発、2023年に市場投入すると今年6月に発表した。新しい時代における環境適合性や顧客満足度を満たしたうえで、再びスピードを追求する時代がすぐそこまで来ている。JR東日本の動きもその一つに数えられるだろう。

車両開発から地上設備改良までJR東日本が総力戦で挑む新幹線のスピードアップ。越えるべきハードルは数多いが、達成したときに得られる果実は大きい。1000万人に迫る東京―札幌間の年間航空機利用者の一部が新幹線にシフトすれば、JR東日本にとっては新函館北斗開業時とは比べものにならないほどの収益が得られる。今度は大量の乗客をどうさばくかについて頭を悩ませる時代がやってくるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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