JR東が総力戦で挑む「超高速」新幹線の勝算

世界は再びスピード追求の時代に突入する?

ほかにもファステック360の技術的な特徴として高速走行時の台車の信頼性確保や騒音抑制といったものがあり、ファステック360の開発と走行試験で得られた知見の多くは、E5系に採用されている。

試験車両「FASTECH360」は猫の耳の形をした空力ブレーキを搭載していた(写真:共同通信)

なお、ファステック360では地震発生時に通常のブレーキに加え、空力ブレーキも搭載していた。緊急停止時に猫の耳のような大型の抵抗板が屋根の上にせり出し、空気抵抗を高めることで停止するまでの距離を短縮できるというメリットがある。ただし、抵抗板を収納するために客室スペースが狭くなるといったデメリットがあり、E5系には採用されていない。

E6系タイプの試験車両も開発?

さて、東京―札幌間1035kmという長距離を走る次世代新幹線を見据えて開発されるアルファエックスには、ファステック360以上にさまざまな新技術が採用されている。地震時の横揺れを吸収し脱線しにくくさせる「地震対策ダンパ」、営業時速360km運転時の騒音を低減させるための車体下部やパンタグラフ形状のさらなる改良といったものだ。

また、長時間乗車を踏まえ、静かで揺れが少ない快適な車内空間の実現も目指す。JR東日本の新幹線にとってはこれまで経験したことのない長距離を走る。「10年後のお客様がどのような時間の過ごし方をするのか、今から勉強しておきたい」と、川野邊修副社長は言う。航空機のように映画などを見ることができるモニターを各座席に設置する、車内にミーティングルームを設置するといったさまざまなアイデアが検討されているようだ。

E5系には搭載されなかった空力ブレーキだったが、アルファエックスには搭載される予定だ。大型の抵抗板を収納するため客室スペースが狭くなるという問題については、抵抗板を小型化して屋根上の鋼体部分に収納し、その上で抵抗板の数を増やしてブレーキ力を高めるという。

また、アルファエックスは東北・北海道新幹線を想定して開発されるが、「将来は秋田新幹線E6系タイプのアルファエックスも造って連結走行について勉強したいと思っている」と、川野邊副社長は言う。E5系とE6系が連結走行するように、2種類のアルファエックスが連結走行する姿が見られるかもしれない。

このように、車両側では時速360kmでの営業運転に向け技術開発が着々と進んでいるが、車両のスピード性能を高めればすぐに走れるというものでもない。東北新幹線で時速360km運転できる区間は宇都宮―盛岡間の425kmに限られる。盛岡以北は「整備新幹線」区間として最高時速は260kmと定められ、騒音対策なども時速260kmを前提に施されている。これでは、仮に時速360km運転が実現しても宝の持ち腐れだ。

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