給料に満足していない人が見落とす根本論点

成果主義と働き方改革の本質は抑制にある

そして、戦後の高度経済成長期を迎えます。日本経済が右肩上がりに成長していく時代を支えたのが、終身雇用と年功給です。この2つに会社の方針に協力的な企業別組合を加えたものが、日本型経営の「三種の神器」と呼ばれ、海外からも大変注目を浴びました。

企業側・社員側、ともに一致団結した「集団管理型」というべき人事評価制度の中で、戦後、日本企業は飛躍的な成長を遂げました。日本型経営とは、いわば「家族経営」。終身雇用で、会社が社員の人生を背負っていくというものです。

個人の能力や業績に応じて給与を上げたり下げたりするのではなく、出産、マイホーム購入などのライフイベントに合わせて「手当」を与えることで、基本給の不足分を補うという思想だったのです。

ところが、この制度はバブルの崩壊、グローバル化の進展によって破綻し始めます。業績は右肩上がりで会社は決して潰れない、社員は生涯会社を辞めない、という前提が崩壊したからです。

そこで新たに登場したのが「成果主義」です。能力や努力のような目に見えないものではなく、目に見えるアウトプット(成果)を評価や処遇に反映していこうとするものでした。欧米から日本に成果主義が広まるにあたり、その主となったのはMBOと呼ばれる成果目標管理制度でした。

しかし、この成果主義の導入にあたっては、結果的に多くの企業が失敗し、その後、方向転換を強いられています。その1つが、富士通です。

成果主義の弊害があらわになった「富士通の失敗」

富士通が「社員のやる気を引き出し、競争力を強化する」とうたい、主に管理職に成果主義を導入したのは、1993年のことでした。その後、全社員にまで制度を広げ、年功序列を全廃しました。

半年ごとに社員一人ひとりが目標を定め、その達成度を上司が5段階評価し、賞与や給与、昇格に反映する。こうした富士通の取り組みは日本企業の中でも先進的なもので、その後、成果主義を導入する企業は増加傾向にありました。

ところが、富士通社内から成果主義の弊害を訴える声が挙がったのです。成果が給与に直結するため、失敗を恐れる社員が増えたこと。さらに、半年の目標設定と達成具合によって評価が決まるため、長期間にわたる高い目標に挑戦する社員が減り、ヒット商品が生まれなくなったこと。また、地味な通常業務がおろそかになり、アフターケアなどの場面でトラブルが続出したという声もありました。

個人の成果は数値で表すのが難しく、結果的に所属する部門の業績となります。業績のいい都市部の事業所や大型プロジェクトに所属している社員が実質有利で、個人の努力や働きぶりは実際には考慮されておらず、給与が「不公平である」との声も出ていたようです。

成果主義への不満により、社員の士気は低下。結果、業績は悪化の一途をたどり、2004年には、3年連続の赤字を回避するため、社員の給与カットにまで追い込まれました。その後、富士通は失敗を分析し、短期的な成果だけを評価することをやめています。

富士通の失敗からは、成果主義を「短期的な成果・結果主義」ととらえることの危険性を学ぶことができます。短期間で達成できる数値目標のみを評価の対象としたことで、大きなチャレンジや長期的な目標を追いかける人材が不足してしまったのでしょう。

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