山根会長「辞任4分声明」の不用意すぎる中身 日本ボクシング連盟のガバナンスに疑問あり
山根会長が声明発表を行ったことについて、もう1つ触れなければいけないのは、日本ボクシング連盟のガバナンス機能。山根会長は、なぜ声明発表をしなければいけなかったのか? その理由は、7日に大阪市内のホテルで緊急理事会を開いたにも関わらず、「会長に一任」という結論しか出せなかったことが、すべてを象徴しています。
緊急理事会を開いたのは、ひとえに危機感の表れであり、山根派とされる約20人の理事が辞任することも併せて、評価されてしかるべきところでしょう。しかし、出席した理事たちは、山根会長に辞任を決意させることも、解任決議を成立させることもできなかったのです。
むしろ取りざたされているのは、理事たちが「これまでの貢献を考慮し、勇退を勧めた」というスタンス。数々の疑惑に加えて、反社会的勢力との交際を認めたことで、辞任は避けられない危機的状況にある「山根会長のメンツを尊重してあげた」ことになります。
事実、山根会長は緊急理事会後に記者たちの前で、「健康を気にしてもらった。理事が『やめさせよう』という言葉もない。『これ以上、会長を傷つけてはならない』と心配してくれた」と誇らしげにコメントしていました。
緊急の会であり、遠方の理事が参加できないなど、解任決議に至らなかった可能性はいくつか考えられますが、それでも「一任」は、一般企業なら許されない着地点。緊急理事会の議事録を一部だけでも公表しなかったことも含めて、「意思決定や合意形成のシステムが機能していない」のみならず、組織全体の無責任さを感じる人は少なくないでしょう。
日本社会に残る無責任と事なかれ主義
ただ、このような無責任な対応は、日本ボクシング連盟に限ったことではなく、「日本社会全体の悪しき習慣」とも言えるものです。
「敬意を表す」「晩節を汚してほしくない」というフレーズを盾に、相手に責任を委ねて距離を取ったり、事なかれ主義で本質から目をそらしたりなどの悪しき習慣は、平成が終わろうとしている今なお、消滅していません。ところが、ネットの発達で情報収集に長けた世間の人々は、無責任な対応も事なかれ主義もすべてお見通しです。
今年、相撲、レスリング、アメリカンフットボールなど、さまざまなスポーツ組織の問題が衆目のもとにさらされました。これらが象徴しているのは、「自浄作用の欠如」であるとともに、「世間の人々に隠し通せず、逃げ切れない」という時代の変化。スポーツ団体に限らず一般企業なども含むすべての組織に、悪しき習慣に陥ることなく、責任ある意思決定やガバナンスが求められているのではないでしょうか。
今回の騒動は、「山根会長だけが悪い」というわけではないでしょう。山根会長の力を利用し、甘い汁を吸っていたであろう人々の一掃も含め、日本ボクシング連盟が一刻も早く正常なガバナンス機能を備えた組織になることを心から願っています。
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