診断から治療まで、最先端「医療AI」の潜在力 膨大なデータを活かし最適な治療をサポート

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山本陽一朗・理化学研究所ユニットリーダーは「医療AIで日本の存在を十分にアピールできる」と語る(撮影:尾形文繁)

ただ、診断は医療行為なので医師にしかできない。AIが行うのは、あくまで医師の補助だ。大量の画像をチェックし異常をピックアップする、多方面にわたる医療データから精度高く治療効果を予測するなど、人の力では時間がかかりすぎる細かい作業、膨大な情報の効率的な処理を中心にサポートする。その結果、医師は診療に集中して、トータルで医療の質の向上につなげる。

「匠の技」をAIで共有する

身近な病気の診断にAIを活用しようとする動きも活発だ。救急医の沖山翔氏が2017年11月に設立した医療AIベンチャー・アイリスは、AIによるインフルエンザ診断支援を目指している。

インフルエンザの初期診断は難しい。鼻の奥に綿棒を突っ込み痛い思いをして検査をしても、感染後24時間たっていなければ診断精度が低い 。24時間以後でも検査精度は60%。陰性でも実はインフルエンザだったというケースが40%もあるわけだ。

沖山翔アイリス代表取締役は医師のかたわら、産総研の研究員も務める(記者撮影)

風邪と自己診断して病院に行かない患者も含めると、年間2500万人といわれるインフルエンザ罹患者は実はもっと多い可能性がある。一方、発症から48時間以上立つとタミフルなどの治療薬も効果がない。

なんとかしたいと考える中で、沖山氏は2013年にある論文に出会う。インフルエンザに特有の咽頭の腫れ、インフルエンザ濾胞(ろほう)を見抜くことで、熟練医師が99%近い精度でインフルエンザを見分けることができるという報告だ。

のどの診察ばかりを何十年も続けた、専門家の中の専門家だからこそできる「匠の技」。沖山氏は「この域に達するには30~40年かかるのではないか」という。こういった医師の視診、視覚情報のパターン認識はAIが得意とするところ。医師のかたわら、産総研の人工知能研究センター研究員も務める沖山氏は「写真を適切に集めれば同じものを再現できる」と思い立った。

アイリスが行うこの研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに採択され、2018年冬シーズンからデータ集めを開始する。良質のデータ数は多いほどいい。のどの画像データを集める先として、複数のクリニック・病院と共同研究を行う予定という。

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