京急ファンたちが語り尽くす「京急愛」の正体 必見!原田社長も自ら「愛される」理由を分析

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鉄道ファンに人気の高い京急の赤いボディ(撮影:尾形文繁)

ファンが京急の魅力と指摘するのは、「速さ」「運行ダイヤ」「赤いボディ」といった点だ。では、その魅力はなぜ生まれたのか。京急の歴史に詳しい研究者によれば、「京急は川崎大師の参詣者の輸送で産声を上げ、東京―横浜間の都市間路線を目指した。これは鉄道院、さらにその後の国鉄への挑戦でもあった」という。「国鉄と同じことをしても勝てないという強迫観念が、あらゆる面で特徴的な電車を作りだし、それが趣味的な面白さにつながったのではないか」(同)。国鉄との競合から京急の魅力が生まれたという指摘は興味深いものがある。

京急の原田一之社長は、庶民的な沿線と一体になれていることが京急人気の理由と話す(撮影:尾形文繁)

ちなみに京急の原田一之社長は京急が愛される理由について「庶民的な場所を走っているのが理由ではないでしょうか」と語る。「当社の路線は大田区を走ります。でも大田区といっても田園調布ではなく、蒲田です。全然違います。川崎や横浜も走りますが、小田急さんや東急さんが走っている北側とは違い、ずっと工業地帯や下町ばかり走っているのです。生活感があって沿線の人たちと一体となった電車ということが、親しみを持っていただいている理由なのかなと思います」。

社内に根付く「面白いことをする風土」

冒頭のタモリ倶楽部に話を戻す。同番組に登場したことがある別の鉄道会社の広報担当者が明かす。「一見、ゆるそうに見える番組ですが、制作会社の要求水準は高い。よくありがちな企画を出しても採用してもらえない」。制作サイドの眼鏡にかなうハイレベルの要求に応えていることが京急の登場回数を増やしたともいえる。

「京急かぁまたたたたーっ駅」になった京急蒲田駅の駅名看板。「北斗の拳」とコラボして、9月17日までの期間限定で実施している(編集部撮影)

これはファン層拡大に向けた京急の近年の経営戦略と共通している。たとえば、三崎口駅を「三崎マグロ駅」、京急蒲田駅を「京急かぁまたたたたーっ駅」に変えるというユニークな試み。「面白いことをしようとする風土が社内に根付いている」と京急広報は説明する。自社がファンから支持を集める理由を正確に熟知し、それをPR戦略にも有効活用する。これが一般ファンからテレビ制作会社まで虜にする京急の魅力の一端である。

京急は2019年秋に本社を横浜に移転する。新本社内には「京急ミュージアム(仮称)」が設置される予定だ。「非常に小さい施設です」と広報担当者は謙遜するが、ひょっとしたらまたしても熱い京急ファンを狂喜させるような仕掛けを練っているかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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