コンビニの「必勝パターン」に立ちこめる暗雲 ビジネスモデルの根幹を揺るがす事態に

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通常、小売産業を分析するときには、既存店の「客単価」と「客数」を掛け合わせた売上高を分析する。ただ、ここでは、客数のみを抽出している。理由は2つある。

1つには、客数の動きを見ることで、いま各業態や企業がどの程度の集客力を持っているのかを見るためである。もう1つは、客単価(購入点数×購入単価)は「集客した後の結果」であり、インフレなどの外部要因も大きく影響するからだ。

さて、先ほどの図表では、小売店ごとに客数指数が100を超えた月を黄色くハイライト表示した。つまり、「客数が前年同月で上回った月」がハイライト表示されていることになる。コンビニ(CVS)、総合スーパー(GMS)、食品スーパー、100円ショップ、ドラッグストア、百貨店についてそれぞれ分析すると、次のような特徴を見いだすことができる。

・コンビニからの客離れは足元のセブン‐イレブンも例外ではない
・総合スーパーから客離れが起こっている
・総合スーパーやコンビニと比較すると、食品スーパーは比較的安定した集客ができている
・インテリアに強い100円ショップが堅調に集客している
・ドラッグストアの集客が安定している
・百貨店はイベント次第で大きく集客が変わる(変えることができる)

小売業の中でも、店舗数が圧倒的に多いコンビニの不調が気にかかる。2018年3月末時点で、セブン‐イレブンは2万0286店、ファミリーマートが1万7205店(国内計)、ローソンが1万4083店もあり、コンビニの「ビッグ3」の店舗数を合計すると実に5万1574店にもなる。

ここまでの規模になれば、コンビニは誰にとっても身近な小売店といえる存在だ。日本の人口が2017年11月1日現在で1億2671万4000人なので、先ほどのコンビニの「ビッグ3」の店舗数で割ると、人口1万人当たりの店舗数は4.1店舗になる。

これは別の見方でいえば、コンビニ1店舗当たりで2457人をカバーしていることになる。たとえば、ローソンの2018年3月においては、既存店の客数は763人である。2457人をカバーしている前提で、1日の客数が763人もあるというのは、1カ月に何度も利用する顧客が含まれていることを考えても、コンビニのユーザーとの接点の多さを示す数値だ。この「身近なコンビニ」から人が離れているのだとすれば、いったい何が起きているのだろうか?

【2018年8月2日18時30分追記】記事初出時、「1カ月の客数が763人」とありましたが事実と異なるため、上記のように修正しました。

コンビニの「必勝パターン」が崩れた

コンビニのこれまでの必勝パターンは、

(1)集客できる立地に出店し
(2)比較的若い世代のパートやアルバイトといった労働力の調達を行い
(3)店舗拡大を進める

という流れだ。ただ、現状ではそのいずれにも疑問符がつく。

コンビニは、「自宅付近や通勤通学からの帰宅途中の便利な立地にあり、24時間365日開店している」という利便性が消費者の支持を受けてきたといってもいい。そうした利便性があるからこそ、品ぞろえはスーパーなどと比べて劣っていても、また商品は高くても、きちんと売れてきたという背景があるだろう。

ところが、eコマースが発達し、消費者にとって便利なサービスが登場することで、その利便性があらためて比較されることになった。

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